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座り込んだ聖に真壁宅の隣人は大丈夫か、と訪ねて手を差しのべてくれた。
これ以上見ず知らずの彼に迷惑をかけたくはないものの、力の入らない身体でベランダを乗り越えるのは正直厳しい。
何度も謝罪を繰り返しながら彼の手を借り、元居た部屋に戻る。
脳の奥がぐらぐらと揺れ、嘔吐感がこみあげてくる。
「けいさつ、呼んでいいっすよ」
真っ青な顔で告げた聖にあきれたような笑いを送ると、彼は冷たい何かを額に押し当ててきた。
「そんな顔した子を警察に突き出すわけないでしょうが」
「へ……?」
放たれた言葉を飲み込みながら額に触れると、冷却シートが貼られている。驚きに目を丸くしていると、名刺を手渡された。
幾島 一寿 と書かれたそれには電話番号とメールアドレスが記載されている。
「俺の番号。管理人にそれとなく聞いてみるから、何かわかったら連絡するよ」
「……すみません。ありがとうございます」
個人情報だから聞き出せない可能性の方が高いから期待はしないでくれ――煙草の煙とともに吐き出された言葉に、聖はただ頷いて深く礼をした。
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