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 計4杯ものご飯を平らげて満足げにしている聖を尻目に、真壁はそっと立ち上がり自室からあるものを持って戻ってきた。  人差し指にひっかけられ、くるくると回っているそれを目に、聖は小首を傾げる。 「……鍵? どこの?」 「バイク」 「バイク?」  聖の問い掛けには答えず、真壁は母に「出掛けてくる」とだけ告げて玄関へと向かう。  途中で振り返り、ちょいちょいと指先で聖について来るように促すことを忘れずに。 「送ってく。ほら、行くよ」 「え、バイクで? っておい待てよ!」  さっさと靴を履いている真壁に焦り、聖は大きな声で真壁母に夕飯の礼を言うとすぐさま荷物を引っ掴んで玄関へと向かう。  聖を置いていきそうな勢いだった真壁は意外にも玄関でじっと立って彼を待っていた。  少しだけ、不安げな表情で。   「真壁?」 「……ここだと、落ち着いて話もできないでしょ」 「はなし」 「うん。返事、ちゃんと聞いてないから」 「へんじ」  おうむ返しを繰り返す聖に笑いかけ、真壁はヘルメットを渡してくる。  こっちだよ、と。今までにないくらいに優しい声音で言って。  車庫へと向かう背中を追う聖の唇が、強く噛み締められているのに真壁は気付いてはいない。  ドク、ドク、と痛いほどの鼓動が胸を打っているのは、一体どちらなのか。

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