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第1話
今日は、たまたま気が向いただけだった。
やることもなかったし、落ち着いた場所を探していたから。
だから僕は、勉強するついでも含めて、いつも通っていた図書館に寄った。
静かに開く両開きの自動ドアを入ると、紙の匂いが鼻を突く。
けれど紙の匂いっていうのは、自然と落ち着くものだ。
入口にある本棚を通り過ぎて、二人ずつ向かい合わせになって座れる机とカウンターがあるスペースに行く。
そこの角にある席が、僕のお気に入りだった。
お昼過ぎで、まだ真上にある太陽の光が窓から差し込んで丁度良く当たっているその席に着くと、図書館全体を眺めてみる。
平日だということもあってか、人は少ない。
「ん……」
疲れてしまったのか寝ている人がいたり、動物や昆虫の図鑑を必死で読んでいる人など、さまざまだ。
そんな中で僕は、ある一人に目を奪われてしまった。
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