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いちごミルクの墓③
◆ ◆ ◆
「もう大丈夫だって、いい加減離れろよ」
狭い畳の部屋で安達はボヤいた。
安達の体調を心配した伊豆原が、彼を自宅まで送り、本当にあの変なのは出て行ったのか?と、後ろから抱き締めてずっと見張っているのが現状である。
「本当に、もう何も居ない?」
「居ないよ。何も感じない」
いつもの印の描かれた、いちごミルクを飲みながら安達が答える。それでも伊豆原は彼から離れようとしなかった。
「じゃあさ、ハル」
「ん?」
「ハル、俺のこと、どう思ってるの?」
「なっ、え?いや、それは……分かんねぇよ。俺、男だし……、中学ん時に女子にフラれて傷付いたこともある、し……」
「なんかイラっとした」
不機嫌な声で後ろから伊豆原が安達の肩に顎を置いた。ビクッと安達の身体が小さく跳ねる。
「は?」
「俺のこと聞いたのに他の子のこと考えるから」
「はあ?皆から好かれてる王子に言われたくねぇよ!このタラシ!お前も悪霊退散されてしまえ!」
身体を捻って数珠を取り出し、安達は伊豆原に向けた。その腕を掴んで立ち上がり、伊豆原が安達の身体を抱き寄せる。
「それってヤキモチ?今はハルのことで頭がいっぱいなんだけど」
「知らねぇってば」
────学校の王子が自分のことを好きになるわけないと思っていた。全て霊の仕業だと思っていた。この気持ちも霊の仕業であれば良いのに。
「キスして」
伊豆原の顔がグイッと安達の顔に近付く。
「な、んで?殴ったことは謝っただろ?」
「違う、確かめたいから」
────ハルの気持ちを。
「っ、くそ……」
もう答えなんて分かっていた。霊を拒むそのキスはいちごミルクと血の味がした。
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