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第1話

「お前はそこで見てろ」 ベッドに上がった俺は、自分より全然高い視線にいる男に冷たい床に座れと命令すれば、そいつは何も言わずに俺の言う通りにした。 コイツは俺の犬。 「ちょっと、3Pとか聞いてないんだけど」 「そうじゃないよ。アイツは手を出さないし見てるだけ。観客がいると燃えるだろ?」 俺の背中向こうをチラチラと気にする女の体に触れて、服を脱がしながらベッドに押し倒した。 適当に愛撫をして挿入すれば、すっかり慣れきった快感に感動も気持ちよさもない。 女の体を抱くのも正直飽きた。ドキドキするような甘ったるい喘ぎ声が大きくなっていくにつれて冷めていく自分がいる。 そんな自分に気付きながらもセックスをやめられない。 それは、俺を見据える二つの目のせい。 普通の男なら、揺れる胸に視線が行くはずのコイツの鋭い目が俺の体を見ている。 いつしかその視線に快感を覚えて、見られているんだと思うと堪らなく体の奥が疼いた。 「また連絡するね」 「ああ、おやすみ」 セックスが終われば早々に支度をして部屋を後にする女を愛想笑いで送り出す。 まだ全裸のままの俺はベッドに横になった。 俺はホモでもゲイでもない。 セックスが終わり、女が帰った後に毎回思うことだ。 なんとなく、興味本位で始めた観客付のセックス。はじめはいつもと違う空間に興奮しているんだと思っていたけど、回数を重ねる毎にコイツの視線を感じるようになった。 俺の体なんか見てなにがいいんだ。 ゲイなのか? もし本当にそうなら触りたくて、ヤりたくて、仕方ないはずなのに従順に言うことを聞いているのはなんで? 俺より体も大きいし力も強い。 俺の事なんか簡単に…。 何故こんな異様な関係になったのか、思い出せない。 少し前は極普通の友人同士だったはず。 こんな茶番をやめるきっかけも、コイツに問うきっかけも、すっかり失ってしまった。

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