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第2話
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数日空けて、前に寝たと言う女から連絡が入った。名前を言われても顔なんて思い出せないが、会う約束をして俺の家へ呼び出した。
「久しぶりね」
部屋の中に迎え入れれば早速首に腕を巻かれて唇を重ねられる。
そのままベッドへ押し倒した所で唇を離した。
「暁人、そこで見てろ」
先に呼び寄せて置いた暁人をベッド脇に立たせた。
「またこの人いるの?なんなら三人でする?」
女が誘うような顔で暁人を見ている。
なんだろう。胸がざわつく。
「いや、コイツ使えないから。女には勃起しないんだってさ」
「なに、ゲイ?」
「そうみたいだよ」
馬鹿にするように鼻で笑って女の気を俺に向けさせる。
女の裸を見ながら俺は後ろを気にした。
今日も俺を見ているだろうか。感じる視線は間違いないか。
暁人に見られていることに意識が移り、女の事なんてどうでもよくなる。
暁人の顔は見えないが、俺を見ている顔を想像すれば背筋が快感でゾクゾクした。
目の前にある餌を食べられず、待てを強制される気分はどうなんだ。
そんな事を考えながらベッドを激しく軋ませて腰を振っていた時だ。
突然、家の玄関ドアが開く音がすると、荒々しい足音が近づき部屋のドアが開いた。
三人の視線が同じ方に向くと、血相を変えた見知らぬ男が現れた。
すぐそこだった絶頂を邪魔された事もあり、非常識な男を怒鳴ろうと思った瞬間、俺の頬が焼けるように痛んだ。
「俺の女と何してやがる!!」
怒鳴られたのは俺の方だった。
当たり前のことだけど、遊び人に寄ってくる女も遊び人と言うわけだ。
情けなくベッドから転げ落ちた俺を睨んだ男は、シーツで裸を隠す女を無理矢理に引っ張っていき家を出ていった。
「アイツら…ふざけッ、いっ」
口を開くと咥内にピリッとした痛みが走った。殴られたせいで口の中が切れたんだろう。
「大丈夫か」
暁人の足下に落ちたのか、真上から聞こえる声に見え上げれば、腕を掴まれ引き上げられた。
「血が出てる」
「いッ!」
目が合うと、切れた口元を親指で拭われた。
傷口をさらに痛めつけるような力加減に苛つきが増していく。睨み上げる俺に対し、無表情の暁人は俺に一歩迫り、反射的に後退りした俺の膝はベッドにぶつかり折れると、押し倒された形になった。
「何すんだ…」
「いい加減やめたらどうだ。次は殴られるだけじゃ済まないぞ」
「犬のくせに俺に意見するな」
従順な犬に逆らわれてイライラする。
いままでずっと、俺のやることなすこと全てに口出しなんかしなかったくせに。
暁人を押し返そうと胸に手を突いたけど、その手を容易にベッドへ押し付けられてしまった。
力の差はあると思っていたけど、それを目の当たりにしてドキリとした。
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