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【1部】第1話

‪アルファ‬とかオメガとかベータとかそんなわけわからない種類でジャンル分けされるこの世界なんか、大嫌いだ。 オメガとして生まれてしまった俺の人生は狂いに狂った。 オメガはこの三つの中でも極端に社会的地位が低く、その理由に発情期というものが関係している。オメガは男女関係なく妊娠ができ、かつ定期的にやってくる発情期は、アルファにのみ反応するフェロモンのようなものがだだ漏れになってしまう期間のことだ。 今の時代薬の開発が進んでいるため多少コントロールをすることができるが、オメガの発情期にあてられたアルファに襲われたという被害はまだまだ絶えない。 そう、俺みたいに。 「うーわ、こいつオメガだぜ!しかも発情してやがる」 「まじだ!なに?俺らに犯されたくてぷんぷん匂わせてんの?」 街中で唐突に発情期がきてしまったため、急いで人通りのない小さな公園に来たが、こいつらの嗅覚どうなってんだよ! 急いで発情期を軽くするための抑制剤を飲んだが、俺の体は抑制剤の効きが悪く、治まるまでに時間がかかる。タイミングが悪いとこんなふうに発情期に反応したアルファにあっという間に囲まれるのだ。 「……ギャーギャーうるせぇな、殺すぞ」 「あ?お前今どういう状況かわかってんのか?」 俺は思わず舌打ちした。 いつもならこんな奴らすぐに殴って終わらせることができるんだが、この発情期が邪魔をする。体が火照てり、全身の力が抜けて、疼く後ろにいれてほしくて今にもねだってしまいそうに――…な、らねぇけど!けど、いつもならぶん殴って終わらせるのに、どうにもこうにも今は喧嘩できる状態じゃない。 「なあどうする?こんまんまヤッちまう?どっか連れてくか?」 「俺ん家ちけーから連れてってもいいけどな」 二人が相談し始めた隙に、俺はこっそり逃げ出すことにした。負けたみたいで非常にむかつくが、このまま犯されるより全然マシだ。 一歩後ずさり、勢いよく走り出そうとしたがそれは失敗に終わりなんなく腕を捕まれ砂利の上に投げ飛ばされた。 「おいおーい、今から俺らにぶち犯されんのにどこ行くんだよ」 「まあいいや、待てねぇみたいだしこのまんまヤッちまおう」 「賛成ー!」 やばい、やばい、やばい! だが俺の方もアルファに興奮したくもないのに体が疼いて仕方ない。頭も熱に浮かされて馬鹿になったのか考えようとしてもなにも考えられなくなってきた。 二人の手が伸びてきて、あ、もう無理、ってなった瞬間、別の場所から声がした。 「おーい、おまわりさーん!ここでアルファがオメガを強姦してまーす!」 熱にやられた頭でもなんとなく聞こえた声。 「っおい、やべぇ!」 「逃げるぞ!」 その声に反応したアルファの二人はさっと青ざめた顔になり、俺の事なんか忘れたかのように猛スピードで逃げていった。 砂利の上に取り残された俺は何が何だかわからなくて、ただただ茫然とするだけ。 ざりざりと砂利を踏む音が聞こえて、大きな影が俺の体を覆った。 「ねぇ、大丈夫?フェロモンすっげーだだ漏れてるけど…って、おい!」 ああ、もう、本当に無理だ。 その声に反応することも、やってきた男の顔を見ることも出来ずに遠のく意識の中、男の慌てる声だけが最後に聞こえた。 ◇ ふと、目が覚めたとき、俺は見覚えのない天井と揺さぶられる体に、俺の頭は中々状況を把握することが出来なかった。 「あ、起きた」 「っ!?あっ、な、に…おまっ、んぁあっ!」 俺は知らないベットの上で全裸になっていた。そしてそんな俺に覆いかぶさる金髪の男。 なにより信じたくなかったのは、俺の尻の中を強く擦るモノ…のことだ。それの持ち主はもちろんその金髪の男で、俺はつまり、この、目の前の知らない男に、ケツを掘られている! 「やめっ、やめ…!あっ、抜けっ!」 「え~さっきまでノリノリだったじゃん。てかお前から誘ってきたんだけど?お尻がぐちゅぐちゅで辛いからハメてくださいって」 「ばっ、いうわけないだろ…っ!ふざけんな!」 正直記憶がないから断言はできない…けどそんなこと言ってたまるか! 今多少冷静になってきているのは抑制剤がようやく効いてきたからだ。そしておそらく、この目の前にいる男も、アルファ。 「でもなんかフェロモン治まってきた?ま、俺まだ出してないからもうちょい付き合ってね。だいじょーぶ、避妊はしっかりしてるから」 「いやだ!もうどけっ、っんあ…!」 聞きたくもないぐちゅぐちゅとした水音が再開して、相手が腰を動かす度に耳に入り最悪だ。 さらに最悪なことに、俺の体はそれを気持ちいいと感じて、完全に受け入れてしまっている。こいつの体を今にも突き飛ばしてぶん殴ってやりたいのに、アルファを欲していた俺の体はそれを許してくれない。 多少抑制剤は効いているものの、こんな近くにアルファがいればオメガの体はアルファを欲する。ほんとに、クソみたいな体だ。 「いやいや言いながらすごい気持ちよさそうだけどね。…あー、もう、出そう」 俺の体に跨る男の息が少しずつ荒くなってきた。もう限界が近いらしくてピストンする動きもどんどん早くなっていく。 俺はなるべく声を漏らさないよう自分の腕に噛み付いて必死に堪えていたが、男はそれをなぜか不満そうな顔で見ていた。 男が俺の一番奥に挿入した状態で腰の動きを止めた。どうやら射精したらしい。 中でビクビク震えているのがわかってようやく終わったと安堵する反面、ゴムにせき止められ体の中に流れてこない精子にもどかしい気持ちになってしまうのは……絶対に気のせいだ。

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