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第2話

再び俺は目を覚ました。 さっきと変わらない真っ白な天井と… 隣で眠る金髪の男。 改めて見るがまあまあ整った顔をしていることに今頃気づいた。金髪で派手ではあるがそれに負けず劣らず目鼻立ちがはっきりしている。 その顔を見ていたら先程の情事が一気にフラッシュバックして、俺は咄嗟に握り拳をつくって今この隣ですやすや呑気に眠る男をぶん殴ってやろうかと思うが、少し冷静になってその手の力を緩めた。 とりあえずもう終わったことだし、どこのどいつかは知らないがもう関わるつもりもない。寝ているうちに逃げた方がいいんじゃねーか? そう判断した俺はこいつを起こさないようベットから脱出することに決めた。幸い来ていた服は床に散らばっているしさっさとかき集めて着替えて逃げよう。 「どこ行くの?」 「っ!」 布団から出ようとした時、後ろから声がかかってらしくもなく肩がびくついてしまった。 ゆっくり後ろを振り向けば、にっこり微笑む金髪の男が寝転がりながら頬杖をついていた。 「助けてやったのに礼もなし?失礼すぎない?」 「…助けてもらった覚えはねぇよ」 「噂通り愛想ねぇのなー。てか噂以上。ねぇ、ところで俺のことわかる?いや、わかんねぇだろうな。隣のクラスなんだけど」 隣のクラス、と言われまさか同じ学校のやつだったのかと自然と眉間に皺がよってしまう。身近な人間にこんな痴態を晒してしまうなんて、かなり気をつけていたつもりだったが発情期で判断が鈍っていたからって油断していた。 思わず舌打ちしてしまう。 「その顔は図星とみた。俺ね、桜井 壮真(さくらい そうま)。覚えた?」 「名前も顔も覚えるつもりはこれっぽっちもねぇ。つーか今日のことは全部忘れろ!事故であって、こんなの俺もお前も得しねぇだろ」 「えー、そんなことないけど」 「は?」 このことをなかったことにしようとする俺に対して、桜井は薄茶色の瞳で俺を見つめながらゆるく首をかしげた。 「誰ともつるまない一匹狼で喧嘩がちょー強いって言われてる笹塚が、実はオメガで発情期に苦しんでるなんてね」 「…お前俺のこと脅してんのか?」 無意識に拳を握れば、桜井はゆっくりとした動作で首を左右に振る。 「違うって!可愛いなって言いたかったんだけど。とくに俺にハメられて気持ちよさそうに喘いでる姿とかちょーたまんなかっ、っでぇ!!」 俺の拳は、次は解けることなく相手の頭にクリーンヒットした。 よっぽど痛かったのか桜井は大きな声を上げ、殴られた箇所を両手で押さえて悶え苦しんでいる。ざまーみろ! 「まじで死ね!」 「いってぇ…本当のことしか言ってねぇのに…」 「もういい。帰る。二度と俺に近寄るなよ!」 「えー学校で声かけちゃだめ?」 「だめ」 「またセックスしよ」 「ぜってーしない。もう喋るな。じゃあな」 さっさとベットから這い出ると、少し腰と尻が傷んだ。今更本当にこいつと行為をしてしまったのかという実感が湧いてきて胸がむかむかしてくるが、今はそれに構ってる暇はないのでさっさと散らばった服を着ると俺は足早にその家をあとにした。

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