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第32話
そして、意を決して声を出す。
「ふ、ふたりって付き合ってるの!?」
「はっ!?」
「わあ、大胆」
一瞬でカッと顔を真っ赤にする笹塚くん。
どこか楽しげに目を細めて笑う桜井くん。
俺がドキドキしながら返事を待ってると笹塚くんが気まずそうにちらりと桜井くんを見て、桜井くんが俺ににこりと笑いかける。
「付き合ってるよ」
「ほ、ほんとに!?」
「うん、ね!笹塚〜」
桜井くんに同意を求められた笹塚くんは、無言で手に持った焼きそばパンを勢いよく齧りながら否定も肯定もしない。つまり、肯定?
「あの、この間桜井くんと笹塚くんと浜岡くんが教室でセックスしてるところ見ちゃったんだよね。桜井くんが笹塚くんに挿入して、笹塚くんが浜岡くんにフェラしてるところ」
「ぶっ」
「汚いよ笹塚。楠って見た目平凡で大人しそうなのに結構さらりとすごいこと言うね」
「そうかな?いや、俺のことはどうでもいいんだ。それで浜岡くんが笹塚くんに、『お前のこと本気で落とす』って言ってたけどそれも本当?」
俺は1番聞きたかったことを二人に聞いた。
笹塚くんは食べていたパンが噎せたのかゲホゲホと咳をしていて、桜井くんは驚愕した顔をしつつも、少し愉快そう。
二人は顔見合わせ、落ち着いた笹塚くんがつまらなさそうにまたパンを食べ始め、桜井くんが代わりに答えてくれる。
「本当だけどー…まあ、結局本気じゃなさそうだけどね。俺たちが付き合ったことを伝えたら、『あっそ』つって興味なさげにしてたし」
「ほんと!?」
「うん。他人の物を奪ってまではしないんじゃない?」
「じゃあ俺が浜岡くんに告白してもなにも問題はないってことだね!」
笹塚くんとも付き合ってないし、笹塚くんを落とすこともやめたようだし、弊害はなくなった!浜岡くんが俺に興味が無いのが痛いけど!
目を輝かせて問う俺に、笹塚くんが苦虫を噛み潰したような顔で見つめてきた。
「…お前浜岡が好きなのか?」
「うん!すごく好き」
「他人の恋路にとやかく言うつもりはねぇけど…あいつはやめとけ。お前オメガだろ?あいつ、オメガは物としか思ってねぇよ」
「知ってるよ!それでも好きなんだ。むしろ浜岡くんなら物扱いは本望だから、全然平気」
満面の笑みで答えれば、どこか引きつった顔をした桜井くんと笹塚くんがそこにいて、ゆるく首を傾げれば目線を逸らされた。
「いろいろ教えてくれてありがとう。二人の邪魔してごめんね!それじゃあ」
機嫌よくその場を去る俺の姿を、二人が可哀想なものを見る目で見ていたことなんてつゆ知らず、俺は浜岡くんを探しに口内を駆け回った。
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