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再結晶化
「ねえ……佳一 君、最近さ……綺麗に、なったよね?」
放課後、潤が教室にやってきて前置きもなくそう言い出した。
俺は耳を疑う。
「──っ?はあ!?」
「あ、ごめん。僕なに言ってんだろ?」
先生が見える所に跡でも残してるんじゃないかと、気が気ではなく潤から目を逸らす。
「でも……うん……」
その間に潤はなにやら唸っている。
不意に目の前に手が伸びてきて、額の髪を漉くように撫でられた。
もちろん、潤の手だ。
「うわっ、今度は何だよ!?」
「こんなこと言ったら、もう姉ちゃん達を怒れないかも。だけどやっぱり、可愛いよ佳一 君」
見つめる視線がやけに熱くて男臭い。
これまでの潤には、なかったものが垣間見えてしまう。
今更、困る。
なんか思ってたのと方向性も違う。
「ねえっ。今度こそ映画、観に行こうよ!次の週末は空いてる?」
その日は先生の家に行く約束だ。
それは言えないけれど、先約があることは伝える。
「そっか。僕、佳一 君をいっぱい待たせちゃったから今度は待つ番だね。いくらでも待つから」
潤が俺の手を両手で包む。
純朴な笑顔が凶器に見える。
じわじわじわと嫌な汗が脇を伝う。
「楽しそーだな」
不機嫌を滲ませた声が背後から掛けられる。
──いやこれ、最悪のシチュエーションだろ!
「ほら八神、部活。早く来いよ」
「佐伯先生、横暴!佳一 君はいま僕と話してるんだから!」
誰がこんな結末を望んだよっ。
何故か睨み合う二人を横目で眺めた。
おかしな構図にキリキリと胃が痛む。
この後の展開は碌 でもない予感しかない。
──溜息しか出なかった。
END
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