｢昨日のあずくんやばくなかった？！｣ 朝一番、伊咲が興奮しながら俺に話しかけてきた。 ｢ああ、あの、掲示板のやつ？｣ ｢そーそー！ほんっとに可愛い！あざとい！｣ 伊咲の声はいつもより高い。 確かにあれは興奮する気持ちも分かる。 俺も悶えてたし。言わないけど。 ｢vommitation見た？！ みんなすっごい荒れてたよ！！！｣ vommitation(ボミテーション)とは vommitのアプリ内でのファン共有ページの事である。 投稿者別にページがあり、 そこのコミュニティに入って同じ人が好きな同士で 推しについて話すことが出来るのだ。 その中で個人的に話したい人がいれば、 vomi mail(ボミメール)を送って 連絡を取り合うことも出来る。 vommitationはフォローとは違い、 複数のコミュニティに入ることが出来る。 俺はazuのコミュにしか入っていないが 伊咲はazuの他に、歌手枠でsaku、nyao、kira、 エンジニア枠でkororiさん、richirichiさんの コミュに入っているそうだ。 kororiさんぐらいなら俺も入ってもいいかなとは思うが 今はとりあえずazuだけ。 azuのvommitationのコミュニティ名は｢azu＊l｣。 あくまでもファン同士の交流であるため、 投稿者はこのページを見ることが出来ない。 ｢待って、今見る｣ そう言って俺はvommitationを開いた。 ・ ・ ・ 503｢あずくんマジで可愛い｣ 504｢日付変わるの狙ってただろ｣ 505｢あざといわー｣ 506｢504＞そういうとこすこ｣ 507｢あずいつになったらTwitter始めるの｣ 508｢プロフ何も書いて無さすぎて草｣ ・ ・ ・ なるほど。 確かに盛り上がっているようだ。 vommitationのいいところは リアルタイムでazuのことを気兼ねなく話せるところ。 そしてそれを公式的にアプリの機能として使えるのも 便利だし治安が良くていいと思う。 アプリ内だと基本ファンしかいないから アンチコメが付きにくいのだ。 ｢あずくんってほんと何者なのかねぇ｣ 伊咲は腕を組んで首を捻った。 それは俺や伊咲だけじゃなく azuファン、ひいては大抵のvommitユーザー達が 気になっていることだろう。 ふと、気になったことを聞いてみる。 ｢今城は、本命はnyaoだよね？｣ 最近、azuの話をよくしているが もしかして推し変したのか？ 実は少し前から気になっていた。 推し被りがダメなタイプではないから別にいいけども。 ｢もっちろん！ あ、でもフォローはazuくんに変えたよ｣ vommitではフォローは一人しかできないので azuをフォローするとnyaoはフォロー出来なくなる。 本命のnyaoの通知が来なくなるということだが それはいいのか。 ｢nyaoくん、Twitterやってるから vommitから通知来なくても大丈夫なんだよね〜｣ 伊咲の言葉に納得した俺はなるほど、と頷いた。