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第7話

寝る前にvommitから通知が来た。 「azuさんが掲示板に投稿しました」 俺は眠い目を必死に開けながら携帯を開く。 azuは基本的に全ての情報がシークレットだ。 だからこそ、こういう公式からの供給を 大事にしていかなくてはならない。 「「探しもの」聴いてくださってありがとうございます。 コメントもたくさん、嬉しいです。 僕の活動ページに「探しもの」の歌詞を載せたので 良かったら見てください。おやすみなさい。azu」 心がじんわりする。 特別なものは何も書いてないけれど、 そもそもの情報提供が少ないから これだけですごく幸せな気持ちになる。 投稿者の中には、毎日掲示板を更新してくれたり Twitterをしていたり vommit以外のアプリから動画を投稿していたりと 積極的に活動している人もいるが azuは使っているアプリはvommitだけ、 Twitterはおろか基本プロフすら分からないし 掲示板は週に一回ほど、 そのうちの半分は新曲のお知らせとお礼に使われた。 謎は深まるばかり。 azuってAIなんじゃない?なんて声が出るのも 不思議ではない。 先程のazuの投稿を繰り返し2、3回読む。 いつものように絵文字、顔文字は無く丁寧な文章。 あ、でも前の掲示板の投稿は雰囲気が違ったな… ふと思い出し、新曲投稿前の掲示板を遡る。 「以前予告していた新曲を 予定通り明日の夜に投稿します。 頑張ったから、たくさん聴いてほしい!な!azu」 ビックリマーク!語尾が砕けてる! 人間味があるのが珍しくて、 これを読んだ時はちょっとテンションが上がった。 なんなら、今読んでもニヤけそうになる。 azuの曲を流しながら眠りにつこうと 布団に潜り込んだが 日付が変わった瞬間またvommitから通知が来た。 「azuさんが掲示板を投稿しました」 俺は飛び起きた。 え?azu? あれ?掲示板って一日一言じゃ無かったっけ? そこで気づく。 あ、そうか。 日付が変わったから続けて投稿できたのか。 さっき投稿したばっかなのにどうしたんだろう。 普段掲示板を使わないから、連投するのは珍しい。 ドキドキしながら携帯を開いた俺は悶絶した。 「今コメント読んでます。 みんな、僕のこと好きすぎませんか?笑 僕も君が好きです。 これからもよろしくね。azu」 「…っ!」 うーわ、ずっる… 俺は枕に顔を押し付ける。 そうしないと部屋で一人でニヤけてる変態みたいに なってしまうから。 いや、もう変態か。 自分の中で出来上がった想像上のazuに 勝手に胸を踊らせている。 顔も知らない人に、男(かもしれない)の人に こんなに悶えることがあるだろうか? ふぅと小さく息を吐き、 もう一度ゆっくりazuの言葉を目で追う。 azuもこの時間に起きてるって思うと、 なんか変な感じ。 っていうか、コメント読んでるのか。 忙しいだろうにすごいな。 いや、忙しいのかすら知らないけど。 どんな生活を送ってるんだろう。 少しでも知りたい。 好きな人のことは、少しでも知りたい。

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