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第41話
俺の方が心臓止まりかけた。
azu…なのか?
隣を歩く男の子をちらちらと見る。
歌声はazuだった。
破片を拾ってくれる手元を見ると、
細くて白くて綺麗で、俺と同じ男とは思えなかった。
七瀬さん、と呼んだその声は飛び上がるほど好きな声。
azu、なんだろうか?
「すみません、わざわざ…
あの、全然戻ってもらっても大丈夫なんで…」
azuに破片を拾わせた申し訳なさと
こんな近くで話してる罪悪感と
好きな声すぎる嬉しさで訳が分からない俺は
さっきからひたすら謝り続けている。
「いや、どうせ戻っても
歌わされるから嫌なんですよね」
azu、もとい蒼くんは顔を顰める。
そりゃあ、あんなに上手かったら歌わされるだろうな。
友達はazuのこと知らないのだろうか。
「バイトですよね?学校この辺ですか?大学生?」
「いや、高二…東高の…」
「わっ、先輩だ。俺も東高、一年です」
うわー。azu年下だったー。うわー。
っていうかazuの時は「僕」って言ってるのに、
今「俺」って言ってるんだけどー。
何そのギャップしんどい。
しかもめっちゃ人懐っこくて可愛いし。
っていうか、
こんな普通にazuと話してて大丈夫だろうか。
俺、刺されない?
なんで俺の心配を他所に
蒼くんは人懐っこく話し続けてくれる。
「カラオケでバイトしてる人に言うのもあれなんですけど
俺、カラオケ苦手なんですよね。
歌うのは好きなんですけど、歌わされるから」
そんなに歌わされるのか。
歌が上手いのも大変なんだな。
しかも蒼くん、顔がいいから尚更大変そう。
俺の視線に気づいた蒼くんはふと目を逸らした。
「それ、癖ですか?」
「え?」
「人の顔じっと見るの」
「え?!」
普段人の顔をじっと見たりなんてしない。
azuかもしれないと思うと
この顔をちゃんと覚えておかないと、と
勝手に目が蒼くんを追っていた。
「すみません…」
「あっ、怒ったわけではなくて、
照れただけなんで大丈夫です」
そう言って蒼くんは眉を下げて小さく笑った。
うおー。なんだそれはー。
照れたのか。azuって照れるのか。
顔を見られただけで照れるのに
あんな歌詞を書くのかー。なんだそれー。
緩む頬を必死で抑えた。
やばい、ニヤける。
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