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第53話

ちょっと可愛かった。 泣きそうな顔で俺の服の裾を掴んできて。 年上なのに なんか、可愛いと思ってしまった。 初めて会った時は 俺と話す時ビクビクしてたのに 今日はちょっと普通な感じで嬉しかった。 七瀬さんと話すのは楽しい。 心がぽかぽかする。 自分から来週の約束を取り付けてしまうぐらいには もう一度話したいって思ってる。 七瀬さんはどう思ってるか分からないけど。 同じ気持ちだと嬉しい。 揺れる気持ちを重ねたくて。 約束はオムライス。 君に会いたくて。 目を合わせてくれない君の 睫毛が揺れる 僕は―― 「蒼、何歌ってるの?」 悠斗が声をかけてきた。 病み上がりでマスクをしている。 日狩 冬弥(ひかり とうや) 立花 礼央(たちばな れお) 柚木 悠斗(ゆずき はると) これが、大体いつも一緒にいるメンツ。 最近悠斗は体調を崩して休んでいた。 やっと復活してほっとしている。 これで礼央の相手をする人が増えたから。 悠斗がいないと全部俺にくるから困ってたんだ。 「え?俺、歌ってた?」 「うん、なんか、鼻歌」 俺はばっと口を抑える。 気付かなかった。 「人前で歌うの嫌いなのに珍しいね〜」 悠斗はくすくす笑う。 「何の歌?」 「えっと…」 少し考えてはっとした。 俺、今、曲作ってた。 無意識に曲を作ってた。 七瀬さんのことを考えて、曲を作ってた。

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