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第75話
今俺たちが向かおうとしている「直島」は
香川県の北、瀬戸内海に浮かぶ
島が丸ごとアートスペースになったオシャレな島だ。
ずっと行きたかったんだぁと蒼は無邪気に笑った。
電車だけでは余りにも移動時間が長くなりすぎるため
岡山県にある宇野駅までJRで行き、
宇野港でフェリーに乗り直島へ向かう。
フェリーの乗船時間は大体20分程だそうだ。
昼過ぎに宮浦港に降り立ち、
周辺で適当に昼ごはんを食べる。
そこからバスで15分ほど、
途中で シャトルバスに乗り換えて10分ほど揺られて、
まずは地中美術館へ。
地中美術館は2004年に
安藤忠雄氏によって設計された美術館だ。
館内にはクロード・モネ、ジェームズ・タレル、
ウォルター・デ・マリアの作品が設置されている。
と蒼から教えてもらったが、
残念ながらクロード・モネしか知らない。
そもそも、モネも名前しか聞いたことないし。
瀬戸内海の景観を損なわないよう、
建物の大半が地下に埋設されたこの美術館は、
地下でありながら自然光が降り注ぎ、
一日を、また四季を通して
作品や空間の表情が刻々と変わるそうだ。
ちなみに、これも蒼から教えてもらった。
そのあとはまたシャトルバスに乗り
李禹煥美術館、ベネッセハウスミュージアムの順で
観光は続く。
李禹煥美術館は、ヨーロッパを中心に活動している
アーティスト・李禹煥と建築家・安藤忠雄氏の
コラボレーションにより設立されたそうだ。
海と山に囲まれた谷間に位置し、
自然と建物と作品が呼応した美術館だ。
ベネッセハウスミュージアムは
これも安藤忠雄氏が設計した、
「自然・建築・アートの共生」をコンセプトに
美術館とホテルが一体となった施設である。
館内には収蔵作品に加え、
アーティストがその場所のために制作した
サイトスペシフィック・ワークが設置されている。
作品は展示スペースにとどまらず、
館内のいたるところ、さらに施設をとりまく海岸線や
林の中にも設置されているそうだ。
はい、ここまで、全部蒼の説明。
旅の予定は全て蒼が立ててくれた。
俺は連れてってもらう身として
蒼のしたいようにすればいいと思ってるから
完全に任せっきりにした。
というのは口実で、
予定を立てるのがめんどくさかっただけ、でもある。
が、物は言いよう。
「俺の行きたいところばっかだけど、本当にいいの?」
「いいよ。ついてく」
俺の言葉に蒼は嬉しそうにニコニコと笑みを浮かべた。
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