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「……別に。お前に関係ないだろ」  喉にまだ何か引っかかってる感はあったけど、無事に言葉には出来たし、小さな声でもすぐ傍に座る佐野にはしっかり届いただろう。  察してくれ、と投げやりな口調になってしまったのは状況を鑑みれば判ってくれる筈だろう。 「……ふうん」 「何だよ」 「いんや、確かに関係ねえなって」  2本目の煙草に火を点けた佐野は自分が発した言葉の無遠慮さに気付いていないのか、クックッと喉を鳴らして笑うばかりでその表情に罪悪の念は感じられない。  むしろ、楽しそうだ。すごく。  これ以上一緒に居たって不快になるだけだし、元々こいつとはそんなに仲良くはない。触れて欲しくはないところに興味本位でずかずかと踏み込んでくる奴に、何も話したくない。  癖なのか、さっきと同じようにぷかぷかと輪っかの煙を吐き出す佐野に声も掛けず、立ち上がる。 『でも神谷には好きな奴いるから――』  妙に引っかかる言葉を聞いた気がするけど、こいつのことだ。どうせ当てずっぽうで言ったんだろう。気にするだけ無駄だ。  日陰から陽の下へと足を踏み出した。 「おい、神谷」    さすがの佐野でも俺の心境を察したのか、先ほどより幾分か真剣な声音で呼びかけてきた。  謝罪の言葉ひとつでもあるのなら、返事をしてやってもいいと口を閉ざしたまま、振り返った。もちろん、視線は鋭く尖らせて。 「真壁の志摩って、くっついたのか?」 「は?」  ……おい、誰か。誰か鈍器持ってきてくれ。今すぐこの好奇心丸出しのこいつの脳天かち割りたい。  そんで開いた頭の中に大声で問い掛けたい。「気遣いの心! 知ってますか!!」と。

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