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「は?」
「だから、真壁と志摩。どうなったの」
「なん、」
何を言っているんだお前は。
吐き捨てようとした言葉は、佐野の何やらよからぬものを含んだ笑みに飲み込まれた。
くっくっ、と喉に引っかかるような笑いは最高に気分が悪くなる。
「何が可笑しいんだよお前……」
「ふ、いやね、……ぶはっ」
「人の顔見て笑うな!」
普通に爆笑されるより、耐えようとしたけど我慢できませんでしたって笑いの方が断然むかつくと、今日俺は知った。わが身を持って。
佐野に対する怒りは収まることはなく、むしろ時間が経つにつれどんどん膨れ上がっていく。なぜならばこいつに遠慮と気遣いがないからだ。なぜ早川はこいつとずっと一緒に過ごせるんだろうか。
気遣いはどへただけど、天然でいい子ちゃん丸だしな志摩の方がずっといいぞ。恋敵だけど話しやすいしめっちゃいい奴だぞ。本人には死んでも言わないがな!!
「だってさ、けしかけたのって、俺らじゃん? どうなったのか気になってさ」
「……」
そうだ。
真壁が志摩を好きなのだと知っていたのは、俺だけじゃない。佐野――そして、佐野といつも一緒に居る早川。こいつらがふたりして、いつまでももどかしいという理由だけで真壁を煽ったんだ。
おかげで、真壁と志摩は大げんかの末、無事にくっついて万々歳だ。ただでさえイラついているのに、結果的にふたりのキューピッドに成り下がったこいつに更なる怒りが込み上げてくる。
こいつがけしかけたりしなければ、あいつらはあのままだったんじゃないか――なんて。どうしようもなくくだらないことを思ってしまう。
もしも、なんて。あるわけないのに。
「言いたくねえの?」
自分の女々しくて醜いどろどろでいっぱいいっぱいだっていうのに、佐野は煽るように俺の顔を覗き込んできた。その表情はこの状況が楽しくて堪らない、とでも言いたげに歪んでいる。
……こいつ、どこまでもクソだな。
「お前には関係ない」
「うん。でも興味はある」
「ッ、」
ふふ、と漏れ出た笑いに怒りが頂点に達した。ただの好奇心で首を突っ込もうとするなんて、無神経にも程がある。
言いたいことは山ほどあるのに、言葉にならない。小さく震え続ける手を伸ばして佐野の胸倉を掴んだ。
ふざけんな、と。言った筈。だけど、強く噛み締めた口でうまく言葉にできたかは判らない。
「……ずっと真壁のこと好きだった神谷が、何を思ってるのか――すげえ、興味ある」
「――っ」
思いもよらない言葉に、息が詰まった。
否定しようにも声を出そうとする度に喉がひくつき、言葉にならない。
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