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何もかもを、佐野のせいできたらどんなに良かったか。
羞恥とじれったさで、頭がどうにかなってしまいそうだった。
「ぅ、……ッ、やっ…め!」
頑として動かそうとしない俺に苛立ってか、佐野は空いた手でズボンの前を寛げ、ボクサーをずり下ろしやがった。
強く拒絶しようとした叫びは佐野の口に飲み込まれ、勢い良く姿を見せた自身に羞恥の涙が零れた。
「俺、男のイカせ方とかわかんねえから。自分でして見せてよ」
「……は、?」
「つらいんだろ? さっさと抜けよ」
そんなの、自分でするのと同じじゃないか。
まさかの嘘丸だしな言葉に呆気に取られた俺の唇を噛み、佐野はまた手の甲をカリカリと引っ掻いてきた。
早く、と。煽るように。
いや、して欲しいわけじゃないんだ。だけど、この状況がどれだけつらいのかなんて、同じ男である佐野にならわかる筈だ。だからさっさと解放してくれたら、トイレで抜くなりしてくるのに。なのに、どうしてわざわざこんなことをするのか。
声を出さないように唇を強く噛み締め、ゆるりと上下に擦ってみる。たったそれだけで達してしまいそうな程の刺激に襲われ、本気で絶望した。
俺の身体、どうなっちゃってんの。
一度強い快楽を拾ってしまえば、あとは転がり落ちるだけ。
佐野の楽しそうな笑い声が耳を刺激してくるけれど、もうそんなものはどうでもよかった。
早く、"そこ"に辿りつきたかった。
何も考えなくていい"そこ"へ、早く。
くちくちと濡れた音が、俺と佐野の間で響く。
背中を丸めて押し寄せる波に素直に身を委ね、瞼を押し上げて滲む視界で目の前の佐野を睨んだ。
噛み締めていた唇はいつの間にか開き、押さえていた声は今にも漏れそうで。
もう、限界だった。
「んっ、ンン、ッ」
叫びを上げそうになった口を空いた手で塞がれたと同時に、下肢に伸びていた手がだらしなく蜜を零し続ける先端をカリリと引っ掻いた。
瞬間、頭の中が真っ白になって身体が大きく跳ねた。
断続的に快楽の波が襲い掛かり、びくびくと震える身体をどうすることもできなかった。
気持ちいい――感じるのは、それだけ。
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