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「出るか」 「は?」  顔面も落ち着いただろ――言うなり佐野は荷物を引っつかみ立ち上がった。  突然のことに返事もできないでいる俺を気もせず、頭にTシャツを被せてまた抱え上げてきた。 「気付かれたくなかったら黙ってろよ」とだけ、告げて。  佐野は俺を抱えたまま会計を済ませ、さっさとネカフェをあとにした。  気になるのは、早川(と思しき人物)との会話。金と女のにおいがぷんぷんして、とても良からぬ雰囲気だった。 「な、なあ。いいのかよ……結構むちゃくちゃやったぞ」 「いいのいいの、全部早川が始末してくれっから」  ソファは汚したし、アイスのゴミもそのまま、おまけに色んなものを拭ったタオルまで放置してきた。あんなもん、何やってたかバレバレだろ。 「早川には多めの金とユミちゃんの番号渡してきたし、こんなことで騒ぐような奴じゃねえよ」  からからと笑う佐野が信じられなくて、抱えられたまま耳のすぐ近くにあった胸を押し返して、Tシャツを剥ぎ取った。  途端に、夏の日差しがじりじりと襲いかかってきて軽い眩暈を覚えた。 「女の子で早川釣ろうってか」 「釣ろうっていうか、釣れるし。あいつも答えるし、ユミちゃんは楽しめるし一石二鳥だろ」 「……」  ユミちゃんが何を楽しむかはさておき、なんか、すっきりしない。悶々する。  自分の出した色々を早川に始末させる罪悪感はもちろん、見ず知らずのユミちゃんが不憫でしょうがなかった。  こんなことの処理の引き合いに出されるって、それかなり屈辱的じゃね。いや、ユミちゃん自身が知るわけないとは思うけど。  けど、もしも麻広ちゃんがそういう流れで男を紹介されたとなると俺はキレるぞ。確実に。何をさらしてくれとんじゃと怒り狂うぞ。  それに、佐野は親友であるはずの早川を何だと思っているのか。 「便利な奴」 「べんり」 「ああ。お前にとっての真壁だってそうだろ? 頭が良くて面倒見が良くていつだって優しくて、言うことを聞いてくれる。困った時は手を貸してくれる」 「……」 「人との付き合いは損得勘定が第一だろ」
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