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 当然、と言ってのける佐野は相変わらずからからと笑っている。  穴を開けてしまうほどに強く見据える俺の目線にも気付かずに、すたすたと歩いていきながら。  たぶん、あいつは察してもいない。  自分の言葉が、どれだけの殺傷能力があるのかを。その言葉のナイフで、受け取った側にどれだけの傷を負わせてしまうかなんてことも。  だから、平気な顔をして好き勝手やるんだ。 「おい」 「……何。怖い顔」  確かに、人は誰でも無意識に自分にとっての損得を計算しながら生きているのかもしれない。だけど、……だけど。 「俺とお前を一緒にすんじゃねええええ!!」  振り向いた体制のまま立ち止まっていた佐野に駆け寄り、勢いよくその額に頭突きをかましてやった。   「だいたい俺に損ばっかさせる人間が偉そうなことほざいてんじゃねえよ。ふんぞり返るなら俺に得ひとつでもくれてみろってんだよ!!」  尻もちをついて俺を見上げる佐野は見たことないくらいに顔面の穴という穴すべてをかっぴらいてすんごい間抜けな顔している。  真壁とつるむようになったのはゲイである俺を受け入れてくれたからで、そりゃあ俺にとって得しかなかった。だけど、そんなくだらないことのために真壁と一緒に居たわけじゃない。  そんなもの関係なく、傍に居たかったから一緒に居たんだ。  そこを、欲まみれの佐野と一緒にしないで欲しい。切に。 「……得、ねえ」  キロリと目を鋭く光らせて笑う佐野は、正直怖い。  全力で頭突きをしたせいでおでこが真っ赤になっているのがまた余計に怖い。  ふむ、と顎に手を当てて考えるそぶりを見せた佐野は俺の腕を引き、ずんずんと歩きだした。  こいつ何も考えてない。絶対何も考えてない。  先を行く背中が怒りを孕んでいて、身の危険を感じる。  今日だけで何回目だ、これ。

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