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部屋に帰るなり、冷たいシャワーを浴びた。
身体中に佐野の匂いが染み付いてしまった気がして、やたらと落ち着かなかったんだ。
火照っていた身体は一気に冷えていき、やっと冷静さを取り戻してきた気がする。
「あー……何やってんだ俺」
勢いに任せてヤって。それだけでなく、まるで恋人のように長い時間抱き合っていた。
ふと我に返った佐野の気まずそうな顔ったらなかった。笑いが出る。マジで。
あんな情けない顔を見せるのは、ずるいだろう。人のいい神谷くんはころっと優しさ見せちまう。
逃げるように佐野の家を飛び出して、今に到る。
「……」
佐野の家族の話には正直びびったけど、別に芸能人ってわけではなかったみたいだし、今もそういう活動をしているようには見えないししたくもないと言っていた。
何が、佐野をあんな張り付いた笑顔を浮かべる人間にしてしまったのだろうか。
佐野郁斗。
ただの好奇心で、スマホにその名前を打ち込んで検索をかけてみた。
「ッ、うわ、」
ずらずらと出てきたのは、「佐野郁斗は今」や「佐野郁斗画像」などの文字に、子どもの頃から今の佐野まで、たくさんの写真が載せてあるページ。
掲示板には、どこであいつに会ったか、どんな対応をされたのかとはしゃぐ人たちの書き込みで溢れていた。
震える手でスクロールを続け、文字を追っていく。
沢山の隠し撮りに、SNSのIDらしきもの。プライバシーの欠片もないそれらに寒気すら覚えた。
芸能人でもない、普通の一般人だぞ、あいつは。
ぼそりと呟いても、それを判ってくれる人はこの画面の中にはひとりも居やしない。
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