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 ぶつぶつと何かを呟き続ける佐野が不気味で、今すぐ逃げ出したいのにできない。  違う、感じてるとかそういうんじゃないんだけど。 「あっ、ん」 「あんって」 「ううううるせー!! 乳首離せこの野郎!!」  顔熱い絶対赤い今。絶対顔赤い。何だあんって馬鹿か!!!  お返しにと同じようにぎりぎりと抓ってやったけど「痛い」と言うだけで他に反応はない。ちょっとくらいは肩跳ねさせるとかして欲しかった。 「なあ、神谷」 「何だよどスケベ」 「ブーメランだからなそれ」  自分で放った言葉がさくっと刺さる。そうね、こんなとこ触られてびくびくしちゃうとかどスケベだわ確かに。そうね。 「……神谷ってば」 「何」 「怒んないで聞いてよ」 「……じゃあ手ぇ離せ」  ゆっくりと手が離れていき、安堵はしたものの自分のそれが無駄に存在を主張しているのが判って腰辺りが落ち着かなくなった。片手は未だに尻を撫でてるし。  反応するから余計にされるんだと無心になって佐野の言葉に耳を傾ける。視線は、まっすぐに絡んだまま。 「俺な、ずっと神谷のこと好きだったんだ」 「えっ」 「いてっ」  予想外のファウルボールについ胸元に置いていた手に力が入り、佐野の乳首をぎゅうううっと摘んでしまった。  痛いと手を引き剥がされても、開いた口が塞がらない。  好き? 佐野が? 俺を? なんで?  ぐるぐると疑問符ばかりが浮かんでは消えを繰り返して、まともな返事ができない。  まっすぐに見れていたはずの佐野の目が見れない。  ふいっと視線を逸らして青い瞳から逃れたおかげで、やっと口から声を絞り出せた。 「う、嘘吐くなよばぁか」  言いたかった言葉とは、全く違うものだったけど。  しんと静まった部屋に落ちた声はしっかりと佐野の耳にも届いている。それは、俺の言葉に対し奴のこめかみがぴくりと反応したからこそ出来た確信。  簡単に言えば、俺の返事で佐野のご機嫌は最悪だ。

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