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早々に欲を吐き出した俺を、佐野はまじまじと見つめた。
俺の顔から首筋、胸元、腹、――下腹部。ひとつひとつを時間をたっぷりとかけて見つめる佐野の視線は突き刺さるように気まずい。
何やってたっけ俺。
何しでかしたっけ俺。
どろりと濡れた下肢と掌が気持ち悪い。
なのに、俺の身体はぴくりとも動かず、ただ目の前の佐野の瞳の動きを追うので精一杯だった。
「……神谷」
「……」
「神谷」
「へ、へい」
頼りない間接照明の灯りが照らす玄関。
なぜこんな場所で発情したのか、俺。
返事とともにそっと佐野を見下ろせば、盛大な溜息を吐いて手を押さえつけている足を退かせと促された。
うう、やり返されたりっていうか、よくもやってくれたな的にぶん殴られたりしないよな。
俺を見据える佐野の顔はすでに酔いなんか醒めきっていつも通りの涼しいそれになってしまっている。
「……ッ、」
俯いて足を退かした途端、自由になった佐野の手が俺を押し倒してきた。
蒸し暑い夏の夜――玄関のフローリングはやけに冷たくて、火照っていた身体が急速に冷えていく。
まあ、ぶるりと背筋が震えたのはその冷たさなんかじゃなく、俺を見下ろす佐野の青い瞳のせいなんだけど。
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