4 / 2160
ー友情ー4
その患者さんが目を覚ましたと同時に声を掛けたのは昨日、望と一緒にその患者さんの事を診ていた梅沢和也だ。たまたまICU室にいたのか、それとも昨日の今日で、その患者さんの様子を見ていたのかは分からないのだけど、そこに居たその患者さんに声を掛けるのだ。
「目覚められました?」
「あ、ああ……まぁ……」
そうゆっくりと返事をする患者さん。
すると間髪も入れずに、
「ここは……?」
呼吸器の合間から聞こえて来る声というのは籠もって聞こえてきてしまいハッキリとは聞こえて来ないもんだ。そこに気付いた和也は、その患者さんの方へと言葉を聞き取る為に近寄り、
「ここは病院ですよ。まぁ、ここは病院の中でもICU室という所ですけどね。桜井さんは昨日の現場火災で怪我をされて、この病院に運ばれて来たんですよ。覚えていらっしゃいますか?」
「あ、まぁ……なんとなくなら……」
和也はその患者さんが意識を取り戻したという事もあってか、その患者さんへと近付くと付けてあった呼吸器を外すのだ。そうする事で今までは呼吸器の中で籠って聴こえてしまっていた声がハッキリと聞こえて来る。
「あー……そうやったわぁ……俺、あの現場で、二階から一階に落っこちたんやっけな。ほんで、怪我してしまったから、今はこの病院へと運ばれたって事なんやっけ?」
そう怪我した事を思い出したのか独り言を漏らす。きっと意識がハッキリとしてきたと同時に昨日の記憶も蘇って来たのであろう。
そう一人納得している、その患者さん。だが和也の方は業務の方をこなさなければならない。
一つ軽く咳払いをすると、
「あの……思い出して下さるという事は記憶の方には問題がない事になるので、宜しいのですが、お一つだけお聞きしても宜しいでしょうか? ご自分のお名前って分かりますか?」
「あ、あぁ! 俺の名前か? 俺の名前は桜井雄介……って言うねんけど、これで良かったか?」
「そうでしたか、ありがとうございます」
そう言うと和也はパソコン画面に向かいその患者さんの名前を確認するのだ。
そして和也は担当医でもある望に連絡を入れると、暫くしてICU室へと入って来る望。
そうここは重症者患者さんが多いICU室なのだから例え医者であっても髪の毛一つも落とせない場所だ。だから髪の毛を覆う帽子にマスク着用は必要で、ここに入ってくる者はマスクに帽子を被っているのだから、誰であっても瞳しか見えていない状態でもある。
そして望はその桜井さんの所へと来ると業務的な言葉を掛けるのだ。
「体の方は痛くないですか?」
「あ、ああ……はい……まぁ……」
そう声を掛けると望は雄介の体へと聴診器を当て様子を見ている間、桜井はジッと望の事を見上げていた。
ともだちにシェアしよう!

