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ー友情ー18

 和也は真剣に、望と桜井の事について考えていたのだが、望の方は急に立ち上がり、しかもその顔はどこかスッキリとしたような表情をしているようだ。 「さてと……そろそろ寒いし、中に入るかなぁ?」  と今まで悩んでいたのが嘘のように望の方はいつもの表情に戻ったようだ。 「へ? え! だって、ほら……あのさ……その……もう、決めちまったのか!?」 「ん? あ、ああ、まぁな……」 「……で、どうする事にしたんだ?」  もう望がそんな表情をしているのだから結果はもう分かっている。 それでも人間ていうのは聞いてみたくなるもんで和也は恐る恐る聞いてみる事にした。  もう望は屋内に入ろうとしていたのか屋上にあるドアノブに手を掛けていた状態だったのだけど、和也はその事が気になってしまったのか行手を阻むかのように望が掴んでいるドアノブの上からその手を掴むのだ。 「そんな事、お前には関係ない事だろ? だから、それに関係のないお前に話す必要なんかねぇんじゃねぇのか?」  確かに望の言う通りなのかもしれない。  本当に望の言う通り今の和也には関係のない話だ。 だが望の事が好きな和也からしてみたら、今掴んでいる望の手をもう本格的に離したくはない。 この手を離してしまったら望は確実に雄介の元に行ってしまうのは間違いない。 そして望がその事について話さなくても第六感みたいなのが働いてしまったのだから止めてしまったのであろう。 その反面、あくまで和也からしてみたら望への片想いなのだから望の事を止める事が出来ないのは確かな事だ。 「ん……まぁ、そうなんだけどさ……」  そして和也は諦めたかのように掴んでいた望の手から離れる。 もう、ここで自分が止めていても仕方がないとでも思ったのであろう。 それにいつまでここに居ても時間が解決する事でもないとでも思ったのかもしれない。  和也が手を離すと望の方は何事もなかったかのように、そのまま屋内へと入って行ってしまうのだ。  ただ和也が望の事を好きなだけであって告白もしていなければ付き合ってもいない状況なのだから今の和也には望を止める事は出来ない。 だから和也は仕方なく望の手を離したというところだろう。  これがもし自分と望が付き合っていたのなら、いやせめて告白をしていたのなら望が桜井の所に行ってしまう事を止められていたのかもしれないのだけど、今の和也にそんな事は出来る訳もない。  和也は望が行ってしまった後、右手を握り拳をギュッと握りしめる。  それ程、今の和也からすると今回の出来事は悔しい事だったのであろう。 確かに自分が望に告白をしてなかったのがいけないのも分かっている。 こう色々な感情が和也の中で渦巻いているのかもしれない。  そしてその拳を壁へと打つける和也。  だが、ただ自分の手が痛くなるだけで心に空いた穴は塞がる事はなかった。  和也は息を深く吐くと、その場へとへたり座り込む。  今の自分は本当に何も出来なかったのだから。 「これから、俺……望と一緒にこんな気持ちのままで普通に接して行けるのかな?」  そう一人呟いても、それはただ空気に消えて行くだけだ。  そしてその会話以降、二人の間には会話がなくなってしまっていた。  ただ二人共無言で仕事をしている日々。  でも仲が悪くなった訳ではない。  ただ単に会話がなくなっただけだ。 そうこう自然の会話というものがだ。  だけど会話がなくなったという事は仲が悪くなったともいうのかもしれない。  そんな時いつものように二人は回診で病室を回っていた。 「次は雄介の所だな……」  そう廊下を歩きながらそういう風に言う望。 「ん? あ、ああ……?」  こう何か急に変わったように思えるのは気のせいだろうか。 ついこの間まで望は桜井の事を桜井と言っていた筈なのに今ではもう名前の方で呼んでいたのだから。

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