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ー天災ー63

「んー……風邪位なら、大した事ねぇから」 「そういう問題じゃねぇんだよ。 俺は別にお前の事を心配して言ってんじゃねぇ! 患者さんに菌をばら撒く気かぁ!? 患者さんの方が大事だろうが……」  確かに望が言ってる事は正論なのだが、それでも今の言い方というのは傷付く。 「あー! 分かったよ! 分かったって! 俺は寝てればいいんだろー! 望は俺の心配なんかより患者さんの方が大事なんだもんな」  和也はソファから立ち上がると『患者さん』という言葉を強調しベッドへと向かうのだ。 「イライラすんのは分かるんだけどさ! 俺に当たってんじゃねぇよ!」  今のこの状況で相当ストレスが溜まっているのは分かる。 望もそう返すと和也の方も似たような感じで返しているのだから。 「なんだとー!」  望は和也のとこに向かい、もう一度何か言おうとしたのだが、その二人の行動を雄介は止めるのだ。 「お前……昨日言うてたやんかぁ、こんな時に争っちゃアカンって……。 お前、そのストレスを患者さんにもぶつける気かぁ!?」  そう言われて望は雄介の方へと視線を向けると、雄介の方は真剣な眼差しで望の事を見つめる。 「ゴメン……」  そう言って少し乱れてしまった白衣を直すとソファへと座るのだ。  地震が起きてからもう三日。  あの地震で何も怪我もなかった人間でも自由が効かない今ではストレスの方が溜まって来ているのであろう。 今はご飯さえも自由に食べられない状況。 道という道は車だって走れない状況なのだから物流だって完全にストップしている。 今のこの状況ではヘリコプターで物資が運ばれて来るのが頼りだ。  『食』も自由に出来ない状況なのに衣類の方も自由に出来ない状況だ。 そう人間にとって最低限必要な『衣』『食』『住』において不十分な生活を強いられているのだから、そりゃ誰だってストレスというのは勝手に溜まってくるもんだろう。  そんな中だからこそ人間というのは生きていく為に普段はやらないような事をやってしまう人間もいるようだ。 精神的にも極限状態になっているのだから強奪や空き家に入っての強盗をする奴も出てくる。 生きる為ならなんでもするという事だ。

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