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ー雪山ー8
「ん? ただの俺の気まぐれって所かな? スキーの話を一番にしたかったんだけど。 今年はマジに俺の方も行きたかったしさ。 それにスキーとかっていう旅行っていうのは気分転換にもなるだろ? 日頃頑張ってるんだから、そのご褒美みたいなもんじゃんか」
「ま、まぁ、そうなんだけどさぁ」
「ま、とりあえず、俺達の方は風呂借りるな?」
和也は裕実の手首を取るとお風呂場へと向かって行ってしまう。
再び二人きりになってしまった望と雄介。
「だってさー」
「まぁ、確かにそう言われてみれば、たまにはええか。 アイツ等がここに居っても。 ま、いつもよりちょい賑やかになるだけやしな」
雄介はそう言いながら望の手首を引くと額へとキスをする。
「ほな、テーブルの上にあるもん片付けて、和也達が風呂から上がって来たら、俺達の方も入んでっ!」
そう雄介は望に向かって笑顔で言ったのだが望の方は雄介の顔を押さえ、
「それは嫌だ……」
そうハッキリと否定する望。
「はぁー!? 何でやねん! いつもやったら一緒に入ってるやんかー」
「今日は和也達がいるから嫌なんだよ」
「そこは望の勝手やんか」
今日の雄介はそれにしても何でもかんでもストレートに望に言ってきているような気がする。 そんなもんだから望の方だっていい顔はしていない。 ムッとした表情で雄介の事を見上げる。
雄介の方はそれに気付いたのであろう。 慌てた様子で、
「ちゃ、ちゃうって! そう言う意味で言ったんとは違うわぁ」
「じゃあ、どう言う意味で言ってんだよ……。 つーか、逆に今日の雄介、大丈夫なのか? 熱でもあんじゃねぇのか?」
本当に普段の雄介だったら、そんな事は言わない筈だ。 だけど今日の雄介は変な事を連発しているような感じがするのは気のせいであろうか。 確かに言葉にはムカッとはするのだが心配にもなるところだ。
望は自分の額手を当てると雄介の額にも手を当てる。
「熱は無いように思えるんだけどなぁ? 呼吸の方も至って普通だし」
「せやから、大丈夫だって言うとるやろ? だからなぁ、ただ単に望とイチャイチャな事が出来ない事が今は不満なだけなんやしな」
やはり今日の雄介は何かが変だ。
「ま、いいか……」
そう望は独り言漏らすと、
「とりあえず、テーブルの上も物片付けちまおうぜ」
「せやな」
二人は先程まで食べていた料理のお皿をキッチンまで運ぶと洗い始める。
その時、望はチラリと雄介の横顔を見て気付くのだ。 本当に今日の雄介は切なそうな表情をずっとしていた。
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