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ー雪山ー168

 望も裕実も全然料理が出来ないってわけではないのだが、やはりキッチンにそんなの人数はいらないとでも思っているのであろう。 そして、あの二人が率先してやってくれるからいいとでも思っているのかもしれない。 「あ、ああ、大丈夫だ」  と裕実からの問いにそう答えてしまっている望。  望はそう言いながら眼鏡の下に手を入れて目を擦るとソファへと寄りかかるのだ。  裕実はそんな望の様子を見ながら話を続ける。 「じゃあ、明日は僕たちと楽しみましょうねー」  そう裕実は手を叩いてまで嬉しそうに言うのだ。  だが裕実には望にそう話を振った理由があった。  そう人間というのは嘘を吐く時とかに癖というものがある。 視線を宙に浮かせてみたり頭を掻いたりという癖が一般的だろう。 だが裕実は望が嘘を吐いている時の癖は知らない。 だから望の事を観察するしか嘘を見破る方法がないという事だ。 そう、もし望が何かしら嘘を吐いているのなら先に言って行動をしてくるはずだろう。 「それに、今日は僕、和也さんに教えてもらったので初心者コースで滑れるようになったんですよー! だから、明日はみんな滑れるんだから、上級者コースで滑りましょうって和也さんが言ってましたよ。 なので、明日は上級者コースで滑りましょうね。 ま、僕的にはいきなりなんで怖いんですけど、今日、和也さんに、もうこれなら大丈夫だって! って言われたので大丈夫なのかな? とは思っているので、明日は僕も頑張りますからっ!」  そう裕実は事実を交えながら望の観察を続けていた。  裕実が話す話を望は裕実の瞳をジッと見て聞いているようだ。  やはりプライドが高い望という事なのであろうか。 それとも、やはり、そこは和也達と同じで医療関係者だからなのであろうか。 もしかしたら裕実が探りを入れている事に気付いているのであろうか。 そこは分からないのだが、どうやら裕実が話している事に若干警戒しているのかもしれない。 そしてボロを出さないようにしているのであろう。  普通の人間なら嘘を吐いている時というのは相手の目を見て話すという事は出来ない。 それを知っているからなのか望の方は逆に裕実の目を見て話をしている。 「そうだな、明日はみんなで上級者コースからやろうか?」  そして嘘を吐いている人間というのは噛んでしまうという事だ。 そこも望からしてみたら注意しなくてはならない所だろう。  そう裕実からしてみたら今の望は嘘を吐いているようには見えない。 寧ろ通常の人間と同じ行動をしているのだから癖とかには当てはまらないようにも思える。  そんな望に裕実は息を吐く。  もしかしたら裕実はこう思っているのかもしれない。 『流石は望さんですね。 完全に嘘を吐いている人間の癖には当てはまらないようです。 確かに、望さんが言ってる事は正しいのかもしれません』と……。

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