1061 / 2160

ー海上ー84

 裕実は和也に抱き締められ幸せそうな表情をしていたのだがフッと我に帰ると、 「和也……雄介さんは?」 「ん? 雄介? ……雄介の事は知らねぇよ……え? まさか、雄介も部屋の方に戻ってねぇのか?」 「はい! だから、望さんと探しにきたんですよっ!」 「……へ? 望も一緒だったのか?」 「それって、どういう意味です? そんなに驚くような事なんですか?」 「いやぁ、あの望がまさか雄介の事を探しに来るなんて思ってもみなかったって事かなあ?」 「僕がっていうのか、そうそう! 望さんだって雄介さんの事が心配だったんで一緒に探しに来たんですからね! まぁ、僕が望さんの事引っ張り出してきたようなもんですけど……」  最後の方は望には聞こえないような声で和也にだけ伝える。 「だよなぁ、まぁ、望から率先して探しに行くような性格でもないしな」  と和也は裕実の言葉に納得するとその場に立ち上がる。 「……で、雄介さんは何処にいるんですか?」 「雄介? 雄介と別れたのはまだ温泉でだったぜ」  裕実の方はそれを聞くと大きな声で望に今和也が言っていた事を伝える。  望の方はその言葉で直ぐにエレベーターへと乗り込むと裕実が言っていた通りに温泉の方へと向かうのだ。  普段の望だったら一人で雄介の事を探しに行くっていう事はしないのであろうが、和也の話だと最終目撃場所がそこなのだから今のところ考えられるのはそこしかないと思ったからなのかもしれない。  向かっている間、望の中では嫌な予感しているようだ。 焦ったようか表情をしているからだ。  和也の話では最後雄介を見た場所というのが温泉というのが気になる。  望は温泉の入浴施設まで来ると脱衣所に通じる引き戸を思いっきり開けるとその音が響き渡る。  走ってきたせいか息も切らしている望。 そして、ゆっくりと入浴場へと足踏み入れるのだ。 「雄介……まだ、ここにいるのか?」  そう望は普通の声の大きさではあったのだが脱衣場からは声が返って来ない。  寧ろ、もう、この場所には人の気配すら感じない位だ。 「いねぇのかな?」  望はもうここに誰もいないのかもしれないと思いながらも何故かこの場所が気になっているようで、とりあえず自分達が利用していたロッカーがある方へと向かう。  すると自分達が利用していたロッカー前の床には雄介が倒れている姿が目に入って来た。  望は雄介へとすぐに近寄ると雄介に声を掛け、 「雄介!」  すると雄介の方は顔を上げ、

ともだちにシェアしよう!