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ー海上ー121

 そして眼鏡が出来上がった頃、再び二人は眼鏡屋へと訪れ、やっとの事で望は視界が見える世界へと戻る事が出来た。 「はぁ……これでスッキリしたぜ。 この一日生きた心地してなかったからな。 視界はぼんやりとしか見えてなかったしな。 今はもうお前の顔までハッキリ見えるんだけど……」  そう言いながら望は雄介に笑顔を向ける。 「それなら良かったな」  その望の言葉に雄介の方も笑顔を向けると雄介の方は先程とは違い気持ち的に先に歩き始める。  さっきまで手を繋いでいた事が嘘のようだ。  急に手に温もりを感じる事が出来なくなってしまった望。 さっきまで雄介に握られていた手を一瞬だけ見つめると先に行ってしまった雄介の事を追いかけるかのように雄介の元に急ぐのだ。  しかし先に行ってしまった雄介は何か目的でもあるのであろうか? 望には何も告げずにデパートを出て繁華街の方へと足を向けてしまっていたのだから。  確かに望の方はこの繁華街は昔から歩き慣れているのだから知っているのだが雄介は多分この辺りの事は知らないだろう。  デパートを出るとそこは人々が行き交う繁華街だ。 そこにはゲームセンターや映画館もある。  やっとの事で雄介に追いついた望。 「雄介……何処に行く気なんだ?」 「とりあえず、望の方は用事済んだんやろ? それやったら、今度はデートに決まっておるやんか」 「デートって」  その雄介の一言で望の方も意識してしまったのであろう。 望はその場で歩みを止めて顔を俯かせてしまう。 やっとの事で雄介との距離を縮ませた所だったのにまた離れてしまう二人の距離。  雄介の方は本当に当てもなく歩いていたのだがフッと気付くと望の気配が無い事に気付いたようだ。  人々が行き交う繁華街。 歩くのだってやっとっていう感じの人々が行き交っているのだからこの中から一人の人物を探すのは困難なのかもしれない。  雄介は望が追いついてくるのを数分その場に立って待っているのだが、それでも望が来る気配がない。  雄介はこの人混みの中を望の姿を探す。  だが本当に望が来る気配もなく仕方なしに雄介は今来た道を戻りながら望の事を探すのだ。  こんな事になるのだったら、あのままずっと望の手を離すのではなかった。 と今更後悔しても遅いのかもしれない。 眼鏡がない時の望の時のようにしっかりと望の手を握っておけば良かったとさえ今は思っているのであろう。

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