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ー過去ー98

 和也は車の窓を開けると、 「とりあえず病院までは乗せて行くからよ……」  明らかに和也が怒っているのが分かるだろう。 声のトーンは低く、どう考えてもその言葉遣いでは上から目線って感じで言っているのだから。  そんな和也に対して望の方はそういう態度は素直に取ってしまうらしく、 「いいよ! 俺の方はタクシーでも使って行くからさ!」  そう一瞬は和也の車に乗りかけた望だったのだが、和也のその態度にムカついたのか、ドアを強く閉めるのだ。 「じゃあ、タクシーで来いよ! じゃあな……」  和也は望に向かい、そう言うと裕実の事を助手席へと乗せ車を走らせてしまう。  その姿に望の方はため息を漏らす。 「仕方ねぇ……今日はタクシーで行くか……」  望はそう独り言を漏らし、携帯でタクシーを呼ぶと病院へと向かうのだった。  まさか朝から和也とあんなに喧嘩するとは思ってもいなかった事だったのであろう。 きっと、もしかしたら今までにはない喧嘩だったのかもしれない。  望は病院へと着くと自分の部屋へと向かう。  すると先に来ていた裕実の方は着替えソファにちょこんと座っていた。 「どうしたんだ?」  望はそう裕実のは優しく声を掛けるのだ。 「僕のせいで、望さんと和也の仲が悪くなってしまったみたいで……」 「そんな事はねぇよ。 これは和也と俺の問題なんだから、お前が悪いって思うような所なんじゃねぇんじゃねぇのか? それにアイツは俺の事分かってるから……分かってくれてんじゃねぇのかな? さっきアイツが言ってた通り、親友だから言いたい事を言える仲。 っていうのは本当だよ。 俺が素直じゃないのはアイツ……知ってる筈だからな。 多分だけど……俺がさっき言った事本気にはしてないと思うんだけどなぁ?」 「そうだったんですか!?」 「ああ、俺はな……。 和也の方は本気かどうかは分からないけどな」  望は鞄をソファへと置くと着替える為にロッカールームへと消えて行く。 「和也なら大丈夫です! きっと、望さんが言った事っていうのは本気にしてないと思いますから。 本当に和也と望さんって仲がいいんですね」 「まぁな……」  望はロッカールームからそう答えると着替え終えてからロッカールームから出てくる。 「さて、気持ち入れ替えて仕事に行くぞ!」 「はい!」  裕実はその事を聞いて安心したのであろう。

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