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ー過去ー99

  先程とは違い、笑顔になったようで望に付いて診察室へと向かうのだ。  それから仕事を終えると、今日は和也が裕実と望の部屋へと来る事はなかった。  裕実の携帯には和也からメールがあったようで、そこには『先に駐車場の方で待ってる』とだけ書いてあったようだ。  裕実は掃除を終えると着替え、 「では、望さん……先に帰らせて頂きますね」 「ああ、お疲れさん……」  望はそう裕実に笑顔で答えると机の上にある書類なんかを片付け始める。  今日は望にとっても早く帰りたい日でもある為、早々と書類や仕事を終わらせたようだ。 「よし! 終わり! と……」  望は早速着替えると鞄を手にし、部屋を出るのだ。  今日、家に帰れば雄介が待っている。  だからなのかいつもとは違い望の足は軽やかで今でもスキップを踏みそうな雰囲気で駐車場へと向かっていた。  望は車のエンジンを掛け、家に帰宅しようとしていたのだが、こういう時に限ってまた渋滞に引っかかってしまった。  早く帰りたいのに言葉とは逆に現実とは違うもんだ。 本当に望にとって雄介が家にいる時というのは貴重な時間だっていうのに本当に車は全くもって動く気配はなかった。  望は車を運転しながらため息を漏らす。  こんな時、空を飛べたら? と何回も考えてしまう事だろう。 空を飛べる事が出来たら渋滞なんか気にせずに、きっと車なんかより早く帰れる事だろう。 そしたら今頃はきっと雄介とテーブルを囲んでいる頃なんだろう。  そんな事を思っていても人間は空を飛ぶ事は出来ない。  仕方なしに望は車が動くのを一人待つ。  やっと車が動いたかと思えば、たった数センチの距離。  望は渋滞を利用して携帯を取ると雄介にメールをするのだ。 『車が渋滞してるからさ今日はちょっと遅くなる』  それだけを送ると望は車のシートへと体を預けるのだ。  どう考えても暫く車が動く気配はなく、それならばゆっくりと待つしかない。  暫くして望の携帯が車内に鳴り響く。 望がその音で携帯を開くとメールの主は雄介からで、 『渋滞に引っかかってしまったんかいなぁ、まぁ、それは、しゃーないやんなぁ。 ほな、待ってるな……』

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