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ー過去ー107
「今はいいんだろ? さっき、お前は時と場合を選べって言ってくれたじゃねぇか」
「ま、そやなぁ」
雄介は望の言葉に納得すると浴槽の壁へと背中を預ける。
「な、望……。 あのな……話変わんねんけど、聞いてくれるか?」
雄介は今度真剣な瞳で望の事を見つめる。 だが、まだ望の方はいつもと変わらない様子だ。
「なんだよ、急に改まって……」
「あのな……さっき、望が言っていた事を聞いて考えている事があんねんけど」
「……へ? 何だよ……勿体ぶらないで言ってみろよ」
「……俺な……仕事辞めようかと思ってねんけどな?」
「仕事を辞めるのか? 雄介は本当にそれでいいのかよ。 せっかく、レスキュー隊員にもなれたのにか?」
「せや……。 まぁ、そこは前から悩んでおった所なんやけど、今日の望の言葉聞いて余計に決めたって所なんかな?」
「今日、俺がなんか雄介に言ったか?」
その望の言葉に雄介は体を起こすと望の顔寸前まで顔を持っていき、望の前で人差し指を立て、
「ああ! 言っておったって! 確かに望の言う通り……丸一日、望に会えないのは嫌やなぁって思うっておった所やしな」
「でもさ、お前にとってレスキュー隊員になるのは夢だったんだろ? ってか、レスキュー隊員になれたって事は、お前という人物っていうのはさ、辞めちゃあいけない重要な人物なんじゃねぇのかな?」
「んー、まぁ、そうやと思うねんけど……。 望にあないな事言われてもうたら、考えてからまうよなぁ?」
「……ってか、今日の俺、お前に仕事辞めてもらいたいような事言ったのか?」
「ああ、言っておったわぁ。 『和也は羨ましい。 裕実と同じ病院で働いているんだから毎日のように会えるからいいよな』みたいな事を言っておったで。 それを俺なりに解釈すると『俺も和也達みたく、雄介と働いてみたいなぁ』って事になんねんやろ?」
せっかく今まで望は顔が赤くなっているのを、おさめた筈だったのだが、今の雄介の言葉で顔を赤くし始める。
確かに雄介の言う通りなのかもしれない。 表立っては『恋人同士で同じ病院で働けているのはいいなぁ』と聞こえるのだが、裏を返せば雄介が言っていた通りになるのだから。
「とりあえずな、一緒に働く事を考えると、望が消防士になるのは無理やと思うし……それやったら俺の方が動くしかないやろ? せやから、俺はレスキュー隊員を辞めて、医者か看護師になろうと思ってんねんけどなぁ?」
その雄介の言葉に何故だか望は首を縦に振りそうにないようだ。
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