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ー過去ー106
「……お、お前と一緒に……今日は……あのさ、風呂に入りたいかなぁ?」
ここまで言うのに何分何秒掛かったかは分からないのだが、先程よりかは成長してきたと言えるだろう。
「ええよ……。 ほな、皿洗ったらな……風呂の用意してくるし」
「え? あ、いいよ……俺がしてくるからさ!」
望はそう言うと急に立ち上がり、お風呂場へと向かって行ってしまったようだ。 きっと赤くなってしまった顔を雄介に見せない為にだろう。
「ま、ええか……」
本当は雄介はお風呂の支度そしようとしていたのだが、望が行ってしまった為、雄介はそのままお皿を洗い続ける。 しかし今日の雄介はいつも以上に浮かれているようだ。 さっき望に『一緒にお風呂に入りたい』と言われたからだろう。 しかも鼻歌まで歌っているのだから雄介のご機嫌というのは絶好調なのかもしれない。
「やっぱ、望って可愛いわぁ。 今さっきの望の言葉に俺のムスコさんにドストライクやったしな。 ま、でもな……今度の休みまで我慢やで……せやせや、我慢我慢。 あー、でも、まぁ、望次第では考えてもええねんけどなぁ」
雄介はニヤケながら一人長い独り言を呟く。
それからして望はリビングにだけ顔を出すと、
「じゃあ、俺先に風呂に行ってるからな……」
「ああ、おう……。 お皿洗い終えたし、俺の方も直ぐに行くし」
「ああ、待ってる」
望は雄介にそう言うと早々にリビングを後にし、お風呂場へと向かうのだ。
そう望の方は未だに顔から赤みがとれてない。
望からしてみたら本当に素直になるっという事は勇気がいる事で恥ずかしさが込み上げているのであろう。
望は浴槽に浸かりながら水音を立てて顔を洗う。
すると雄介の方もやっと脱衣所へと来たようで、すりガラスの向こうに人影が見える。
望は雄介に『一緒に風呂に入ろう』とは言ったものの、今更ながらに恥ずかしさがこみ上げて来てしまっているのか、どうやら既に目のやり場に困っているようだ。 瞳を宙へと浮かばせキョロキョロとさせているのだから。
それから直ぐにお風呂場と脱衣所を繋ぐドアが開き雄介はゆっくりとお風呂場へと入ってくる。
「眼鏡の無い望を見るのは久しぶりのような感じがするわぁ」
「そ、それは……仕方ねぇだろ? 流石にお風呂に眼鏡なんか掛けて入らないんだしよ」
その望の言葉に雄介は望の顔を無言で覗き込む。
「ちょ、おい! な、なんだよ……」
「いやな……素直やないなーって思ってな」
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