1928 / 2160
ー希望ー73
「せやけどなぁ? 裕実の方が明らかに早く処置した方がええと思うねんけどな」
「そんなに悩んでいる暇があったら、早く、患者さんの方を運んで行って下さい! お願いします! 僕の方は大丈夫ですから!」
裕実は雄介に向かい懇願するかのような瞳で見つめるのだ。
雄介はそんな裕実に溜め息を漏らすと、
「裕実がそないな風に言うんやったら、しゃーないか……。 ほな、先に患者さんの方を病院まで運んで、応援呼んでくるわぁ」
雄介は裕実の言葉に折れ先に患者さんの方を運ぶ事にしたようだ。
「とりあえず、何もせずに大人しくここで待っておるんやで、とりあえず、意識飛ばさんようにな。 お前がもしここで死んでもうたら、俺、和也に顔向け出来んようになってもうし、それに、和也を悲しませることになってもうしな」
「分かってますよ」
裕実は雄介に向かい笑顔を向けると、雄介も裕実に向かい笑顔を向ける。
「レスキュー時代に鍛えた体で、なるべく早く、行って来るし……」
「そうでしたね。 雄介さんが居てくれると頼もしいです。 体力的にも能力的にも頼れますしね」
雄介はまずは患者さんを背負うと山を下り始める。
だが今、雄介が下りている所は山道ではない。 山道の方であれば人工的に作った道であって、ある程度は整備されているものの、山道ではない道では急な斜面があったり石等がゴロゴロしていたりして、かなり危険な所でもある。
いくら雄介がレスキュー時代に鍛えていたとしても人一人担いで山を下りるのは容易なことではない。
雄介は石や急な斜面に何度も滑りそうになるものの何とか体勢を立て直し足を踏ん張り、ゆっくり、そして早く確実に山を下りて行く。
そして、どうにか下山は出来たものの雄介にとってあまり土地勘がある場所ではない為、そこで立ち止まってしまったようだ。
「アカン……山を下りて来たのはええねんけど、春坂病院が何処にあるのか分からへん……」
そう独り言を漏らし急に立ち止まって考えてしまう。
「せや! タクシー呼べばええんやな!」
いい考えを思い付いたのも束の間、
「アカンやん……俺、金持ってへんで……」
いい考えが浮かび表情が明るくなったのも束の間。 直ぐに雄介は落胆の表情へと戻ってしまう。
ともだちにシェアしよう!

