2032 / 2160
ー信頼ー87
「それにな……今更、親のところに帰る気なんか、さらさらないしなぁ。 なんやろ? 確かに俺は親に相談せずに医者になった訳やし、どっちかって言ったら俺の場合にはある意味、望の為に医者になったようなもんやしな。 今更、諦める訳にはいかんやろ?」
「僕だって、そうですよ。 雄介さんとは多少違いますが、もうこれ以上、僕には生きていける場所っていうのは無いと思いますしね。 例えば、今、他の病院で働く事になってしまったら、また、色んな人と上手くやっていく自信なんてありませんからね。 だから、本当に今は逆に望さん達と出会えて良かったとさえ思っている位なんですから、そこの所は本当に感謝しておりますよ。 こんな僕でも受け入れてくれたんですから」
「うん、ありがとう。 まぁ、とりあえず、また、宜しくな」
そう望が言ったと同時にリビングと廊下の間にある引き戸が勢い良く開けられる。 それと、同時に大きな音が部屋内に響くのだ。
「ちょー、和也ー! マジ、ビックリするから辞めろよな」
「あー、マジに気持ち良かったー!」
「じゃねぇよ……」
望はそう小さな声で突っ込むのだが、和也はいつもと変わらない感じで微笑む。
「ま、いいか……」
そう望は小さな声で言うと、
「そうだ! 裕実ー、どうせなら、二人で入って来ちまおうぜ」
「って、何だよー! 俺等は一人で入って来たのにさ」
「時間、あんまねぇし、短縮の為にな」
「ちょー、マジかよー」
そう本当に嘆きながら言っているのか、それともふざけながら嘆いているのか、和也は言うのだ。
「怖い狼さんとは入りませんよー!」
「まったくー、裕実まで、言うんだからさ」
「ホンマ、あの二人は仲ええんやな」
「まぁ、そういう事だから……」
そう言うと望と裕実はお風呂場へと向かう。
久しぶりに二人きりにされた和也と雄介。
「……で、俺が風呂に入っている時に何を話してたんだ? こう何か戸を開ける前っていうのはいつもとは違う空気が流れてたように感じたんだけどな」
そう和也は雄介が座っているソファの横に座り雄介の事を真剣な瞳で見上げる。
「流石は和也やなぁ。 ホンマ、そういう事に関しては敏感っていうんか? まぁ、望の心配事って言うんかな? 今後もこの四人で診療所を続けていられるか? っていう事なんやって……ほら、人間だからさ、結婚とかして子供とか産んで幸せな生活を送りたかったんなら謝るっていうのを言っておったわぁ。 望の家庭の事情でこの島の診療所を作ってしまったようなもんだから、勝手に決めてしもうてゴメンとかな。 せやけど、そこは俺は何があっても望に付いていくって言うたし、俺の方はもう望の側に居るつもりやって話したわぁ。 だからな、まぁ、そういう事で和也の方はどうなん? って……」
ともだちにシェアしよう!

