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第9話

何回か目を瞬かせてから、未樹の姿を見た俺は息を呑んだ。 未樹は、紺色のセーラー服姿だった。 胸元には真っ赤なリボン、下は膝上ミニスカートに、白のハイソックス。 そして何より、未樹の唇。 ぽってりと艶のあるピンク色に染まっていた。それが何なのか、説明されなくても十分に理解できた。 「み、未樹、それって…」 俺が声を掛けると、未樹は、顔を歪ませて目に涙を溜めた。 「…俺、女装が趣味なんだ…小さい頃から女みたいだって周りに言われてきて、なんとなく女のする格好に興味があって…それで、高校上がってすぐに、ネットで試しにこれ買って着てみたら、すごく高揚した気分になったんだ。このグロスも、ちょっとした好奇心っていうか…。こんな趣味があるなんて知られたら嫌われると思って……こんな俺で、ごめん。お願いだから、嫌いにならないで…」 未樹はグズグズと泣きながら頭を下げた。 俺はすぐに「馬鹿だな」と笑って未樹の手を引っ張って、二人でベッドに倒れ込む。 「言っただろ。どんな未樹でも好きだって」 「…ほ、ほんと?軽蔑しない?こんな俺…変態だって思わない?」 「それはこっちの台詞だよ。女装ごときが何だよ。俺は四六時中、お前の喘ぎ声とか蕩けた顔を脳内再生させて、毎夜お前をオカズに一人エッチしてんだぜ?そっちの方が変態で重症っぽくね?」 「...…っ」 真っ赤になった未樹の頬を、優しく撫でてやる。 「ったく、ややこしいんだよ、キスもどんどん上手になりやがって。変に心配したじゃねーか。…可愛いよ。すげぇ可愛い。ていうか……いい」 「え……いい?」 「すげぇ似合ってるし、そそられる。これからは自分だけで楽しまずに、俺にも見せてくれる?」 「……うん…高志が見たいって言うなら…いつでも…」 未樹を引き寄せ、そっと口づけた。 グロスの味がちょっと苦かったけど、それさえもなぜか愛しくて笑ってしまった。 俺は何となくピンと来て、未樹に尋ねた。 「これ以外にも衣装ってあんの?それ見られたらまずいと思って、部屋に招待してくれなかったの?」 「…部屋のクローゼットに、ドレスとかナース服とか、何着もある。高志が来る時は、絶対に見つからないような場所に隠してた」 「はぁー、最高。ほんと可愛いなぁ、俺の未樹は」 ノーマルなセックスを経験出来たら、コスプレエッチってのも、悪くないな。 ていうかこんな事、泣いて告白するような事じゃないだろ。 でも、隠したくなる気持ちもよく分かる。好きだからこそ、怖くて伝えられない事もある。 ま、未樹も俺の事、結構好きでいてくれてたんだって分かったから、全部良しとしようか。 こんなにも優しさに溢れた未樹と恋に落ちた俺は、きっと世界一幸せだ。 END*

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