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12.土曜日、幸せな報告

会長視点  土曜日のお昼過ぎになり、起きる。隣にはすっかり疲れて眠ってしまった黒瀬先生がいる。昨日は先生が嬉しいことを言うもんだから、つい抱き潰してしまった。最後の方は先生の意識が吹っ飛んでいた。  俺がベッドからそっと出ようとしたら、横にいる黒瀬先生がつついてきた。 「何です、先生」 「いま、何時だ」 「12時です。昨日は調子に乗ってすみませんでした。あの、それで、先生。俺達って、その──正式なお付き合い、してますよね? 」 「あ、ああ……多分……」 「えへへ、嬉しいですね。──あ、先生、今日は寝ていてください」 「わかった……」  黒瀬先生はすぐに寝息をたてて眠り始める。……ああ、やっと恋が実った。そう思うと、顔のにやつきが止まらない。  ──と、玄関のチャイムが鳴った。俺は眉を潜め、玄関に向かう。 「こんにちは、会長」 「……莉菜、何の用だ」 「あらやだ、お邪魔だった? 」 「いや、抱き潰しちゃったから先生はまだ寝ている。それで、用件は? 」 「んまあ……。──あ、用件っていうのは、あなたのお兄さんがようやく観念して社長になってくれたっていう報告よ」 「それだけならラインで──」 「朝早くにしたけど、既読すらつかなかったから、わざわざ来たのよ。夕べはお楽しみでしたねって奴かなーって推測して」 「……さすがだな」 「そりゃ幼なじみだもの。あー、そうそう、恋が実ったのは祝福するけど、くれぐれも注意よ? 先生、30歳なんだから体力は無いわよ。抱くにしても3回までがギリギリかしらね」 「え、それだけしかもたないのか? 」 「当たり前でしょ? しかも、先生は運動をあまりされないタイプ。絶対キツくて音をあげるわよ。いつか熱出しそう」 「そうか……」 「ああ、あともうひとつ。生徒会の仕事を疎かにしないこと。分かった? 」 「はいはい」 「んもう、適当なんだから。あ、じゃあ私はそろそろ帰るわね。お父さんに婚約の話を破棄してもらわなきゃ」 「またな」  莉菜が帰ったあと、リビングに戻ってスマホを確認する。確かに昨夜から今朝にかけて、赤坂からラインが来ていたようだ。 『あなたのお兄さんを今説得しているわ。だからあなたも頑張りなさいね』 『やっと社長になると頷いてくれたから、書類を書いてもらっているわ。あー、疲れた。いつかお礼としてなにかしらおごってね』 『さっきから既読つかないけど、どうしたの?まさか……。ま、とりあえずおやすみなさい。幸せにねえ』 『おはよう。結局既読つかなかったわね。まさか、夕べはお楽しみでしたねって奴?やったわね! おめでとう!』  幼なじみとして色々相談にはのってもらっていたが、いつの間に健一さんと接触したのだろう。全然気づかなかった。  兄である健一は、俺とはかなり仲が悪い。俺のことは全く気遣いもせずに家出をし、社長職を放棄した。現在は代理として莉菜の母親が就いているが、俺が大学を出たら絶対に次期社長になれと言われてきた。それで健一さんのことは諦めたのだろうと判断したが、まさかまだ諦めていなかったとは。  とりあえず莉菜とその家族には感謝の意をこめて、どこかお洒落なレストランでも奢ってやろう。そう思い、馴染みのレストランに予約をいれる。 『莉菜、色々ありがとうな。クレドアを予約しておいたから明日にでも行くといい』  ラインをするが、既読すらつかない。多分、家族会議がまだ終わっていないのだろう。……まあいいか。  先生が起きてきたのは、夕方になってからだった。声がかれていたからまずは水を飲ませ、それから夕食にすることにした。 「健二、昨日みたいになったらあれだから、ルール決めても構わないか? 」 「ルール、ですか」 「ああそうだ。俺ももう30だ。昨日みたいにがっかれたら腰が痛くてたまらない。だから、ヤるのは週に3回までだ。あと、平日はお願いだから軽めで頼む」 「えー、仕方ないですねえ。……まあ、俺の理性次第ですけど」 「本当にやめろよ、頼むから、な? ほら、養護教諭の代わりって中々いねえんだよ。それに今からの時期人が増えるし、漣は週後半は絶対断るし。分かったか? 」 「まあ、一応」  学校を休まれたらそれはそれで困る。仕方ないな、と思いつつそのルールを飲むことにした。  夕食後。先生はいつものようにシャワーを浴び、客間でさっさと寝てしまった。片付けを終わらせた俺も、いつもより早くシャワーを浴び、ベッドに向かった。 「大好きです、先生」  これからのことは明日にでも考えよう──。そう思いながら、先生を抱き締め眠りについた。

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