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第1話 monochrome memory
――今でも時々、瞼 の裏で再生される、俺の記憶。
俺の生まれた町は殺風景な海があった。
幼い俺は防波堤の上を歩くのが日常だった。
誰もいない防波堤を1人で、時には少ない友達と、歩いていた。
何歳の時かも、
月曜日なのか日曜日なのか、
高波なのかさざ波なのか、
空は青かったのか赤かったのか、
記憶は徐々に薄れている。
だけど、今でも鮮明に覚えている。
防波堤の上で独り立ちすくんで、地平線を只、眺めていた、美しい人。
まるで古いモノクロ映画の1シーン。
俺はそっと防波堤を降りた、気がする。
――あの人は、一体誰だったんだろうか。
声をかけなかったことに後悔はない。
でも、なんで。
こんなにも俺に棲みついて離れてくれない。
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