1 / 42

第1話 monochrome memory

――今でも時々、(まぶた)の裏で再生される、俺の記憶。 俺の生まれた町は殺風景な海があった。 幼い俺は防波堤の上を歩くのが日常だった。 誰もいない防波堤を1人で、時には少ない友達と、歩いていた。 何歳の時かも、 月曜日なのか日曜日なのか、 高波なのかさざ波なのか、 空は青かったのか赤かったのか、 記憶は徐々に薄れている。 だけど、今でも鮮明に覚えている。 防波堤の上で独り立ちすくんで、地平線を只、眺めていた、美しい人。 まるで古いモノクロ映画の1シーン。 俺はそっと防波堤を降りた、気がする。 ――あの人は、一体誰だったんだろうか。 声をかけなかったことに後悔はない。 でも、なんで。 こんなにも俺に棲みついて離れてくれない。

ともだちにシェアしよう!