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第1話
遠距離恋愛から五年。やっと我が家に帰ってきて見たものは尚之のバニー姿だった。
寂しさを紛らわすために一人で楽しむハロウィンの締めくくりは尚之をトロトロに溶かした愛の営みだった。
何度も何度も求めてくる尚之は壮絶な色気を放ち、透を虜にした。全てを堪能するかのように隅々まで果てるまで愛し合った。
目が覚めた次の日。今日からまた一緒に住めると話した時の尚之のあの表情は一生忘れないだろうと思うほど透の胸に焼きついた。
瞳を揺らし破顔した泣き顔は寂しさを物語っていた。ここで一人いつ帰ってくるかわからない透を待ち続けていたその寂しさを、埋めてやれるのは自分しかいないと決意を新たにしたほどだった。
『もう…どこにも行かない?』
どれほど我慢をしていたのかと思えば思うほど胸が張り裂けそうになった。
尚之には両親がいない。離婚した両親はそれぞれの伴侶を見つけ尚之は年老いた祖父母に育てられた。その祖父母がいない今、尚之の家ははここしかない。安住の地と願いここを購入したのもそれがきっかけでもある。
快晴の空、洗濯物が北風に揺れているのをぼんやりと見ていた透は、リビングの隅にある自分の背丈はある大きなツリーの視線を移した。
去年までは玄関のシューズボックスに置くような小さなツリーを飾っていた。それでも尚之は嬉しそうにその棚をクリスマス仕様に飾っていた。
街角がクリスマスを匂わせる季節が来た頃、買い物がてらに立ち寄った雑貨屋で見つけたものだ。
「今年は大きなクリスマスツリー買おうか」
そう尋ねれば嬉しそうに笑顔を見せながら頷く尚之は可愛い笑顔をまき散らした。それに当てられその店で一番大きなツリーを買ったのだった。
飾りは自分が買うと、日々増えていくツリーの彩りを楽しみに帰宅していた。
それなのに…尚之はいない。
飾り付けの終わったツリーと透を残して。
いや、いないは語弊だ。この三連休の二日間、大学時代の友人と旅行に出かけたのだ。
我が家に帰ってから初めてのまとまった連休に尚之はいない。何もする気が起きず、取り敢えずは掃除をしようと思ったのだが、日頃から綺麗にしてくれている部屋は片付けるものもなく、洗濯と布団を干せば終わってしまった。
尚之がいないとなれば、今日はクリスマスプレゼントでも買いに行こうと重い腰を上げ、透は自室へと向かった。
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