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第14話

「でも」 「?」 湯船の底で、亘の手が貴志のモノにそっと触れた。 「ベッドの中では、ちょっとだけいじめてもいいかな」 「さ、佐伯先生‼︎」 水しぶきをあげて、貴志が亘にのし掛かってきた。 貴志の肩越しに亘は窓を見上げた。小さく切り取られた空に、星が瞬いていた。 「あ」 「うん?なんですか?」 湯船の中で貴志の膝に器用に乗せられて、甘えるように彼の首に両腕を回した。 亘の巻き毛が濡れて縮み、額にかかっている。そばかすの散った小さな鼻、少しぽってりした唇からこぼれる白い歯。長いまつ毛が可憐さを際立たせている黒い瞳。 貴志と目が合うとすぐに顔をそらしてしまうので、いつもしっかり見ることの出来ない亘の顔を、今日はこんなに近くから見ることができて、貴志は嬉しそうだった。 かわいい、かわいいと言いつのる貴志を潤んだ瞳で恥ずかしそうに見ながら、亘が小さな声で言った。 「デパートのツリー、すごく綺麗だった。けど周りは家族連れとかカップルばかりで、ひとりで見るのは寂しくて、あんまりよく見られなかった…」 言い淀んだ亘の頬にそっとキスをしながら貴志がささやいた。 「明日、ふたりでじっくり見ましょう」 〈了〉

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