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🎄Jaz Night eve 1 16日 今夜のおすすめ

🎄Jaz Night eve 1 16日 今夜のおすすめ 「 珍しい、1人か? 」 「 たまにはいいだろう 」 「 随分反抗的な 」 「 悪かったな 」 軽く笑うと、ごゆっくりと言って、奥へ下がってしまった。 調子狂うな、線をしっかり引いてるのに、指は相手の腕に寄せるような、 そんな間合いを取るのが上手い。 仕事柄か経験からか。 注文に来たホールスタッフに 「 アード ベッグのウイスキー ソーダと、 なんか今夜のおすすめのものを選んでくれる? 」 と告げると、 「 今夜はクリスマスナイトですから 」 「 だから? 」 「 しっかり焼いたシュトーレンと 合鴨の燻製。 それと冷やしたモッツアレラではブラータが入荷していますから 」 「 いい選択だ! 」 メニューは開かないでそのまま渡した。 もう、クリスマスか。 ステージでは演奏が始まる。 オープニングはクリスマスソング "Deck the halls" 柊飾ろう ゆったりしたリズム 、 動揺の様なコケティシュな展開の曲。 ヒーイラ ギ か ざ ろ う ララララ、ラーラ、ラッララー このサックスなら俺にも吹けそうだな。 暫く演奏を聴きながら、暮れの余裕のない予定表と今日のつらつらを思い出しながら、そして忘れようと酒を飲む。 周りを見る余裕ができると、 なぜか俺の席から先の斜め前、 1人の女性の後ろ姿が気になった。 じっとなにかを見つめているのが後ろ姿からでもわかる。 ジャスライブを楽しみに来たのではないな、あの雰囲気は。 「 啓志さん、何かお持ちしましょうか? 」 声をかけてきたのは前にここでスタッフ兼バンドメンバーの一員だったジュンヤさんだった。 「 お久しぶりです。じゃあウイスキーソーダ、ラフロイグで 」 近づいたスタッフにジュンヤさんは注文を告げる。 「 晴矢、調子でてますね、いい感じだ 」 「 ジュンヤさんは今日は? 」 「 今夜は知り合いが来たので挨拶がてら 」 「 吹いていきます? 」 「 うーん、いれてもらえれば 」 笑いながらそういうと、知り合いに声をかけられ、 じゃあといって去っていった。 たしかに今夜の晴矢は、かなりいい調子で吹いている。 細身の身体をしならせて、長い睫毛の下で俯く視線は、時々上目遣いをするのが更に艶を帯びる。 ホワイトアッシュに染めたミドルの髪にツインパーマで、毛先が跳ねるように動く。 美容師の好きにさせたような頭なのに小ぶりで中性的な面差しに似合うんだから。 見目の良い男、演奏スタイルまで色香が漂って、食っちまいたくなる…… え?俺今何考えた?

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