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達規(たつき)悠斗(ゆうと)のことは勿論知っていた。 定期試験で廊下に貼り出される、成績上位十名の名前。 そこに毎回挙がるどころか、定位置かのように一番上に居座り続けているのがその名前だった。そいつ個人に興味がなくとも、さすがに顔くらいは覚える。 学年首席という肩書きと、それに見合わぬ外見で、達規は有名だったといえる。 ブリーチのかかった金に近い茶髪、着崩した制服、両耳にガチャガチャついたピアス。 小柄ながら立派な雛型ヤンキーの出で立ちだった。 毎度の服装検査では当然目玉を喰らっていたが、俺の知る限りでは入学当初から今に至るまで、それは一度も改善されたことがない。 とは言え、入試トップに始まって以降、首席を守り続けている成績。 外見だけは校則フル無視だが、それ以外には素行の悪い部分もなく、むしろ無遅刻無欠席で授業態度は非常に真面目。 さらには人懐こく面倒見の良い性格で、多くのクラスメイトからも好かれている、と来れば。 生徒指導を除く教師のほとんどは、何かのついでに軽口のように注意をするくらいで、達規の髪や服装について特別指導をしようとはしなかった。 学年首席を免罪符にヤンキー風情を貫いているが、中身は真面目なイイ奴。 それが達規悠斗という生徒に対するおおよその共通認識で、俺もそう思っていた。 高校生活のスタートから半年余りが過ぎた、あの秋の日までは。

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