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第12話

 順平は気をつけをした。今のって、もしかして、もしかすると……、 「侠気(おとこぎ)を見せた、ご褒美のチュウだ」 「レオンさぁん、大好きです!」  ほの赤い顔を見られまい、と飛びすさるのを引き戻し、抱きしめる。そして万感を込めて唇を重ねた。  といっても、これが人生二度目の接吻で、イマイチ勝手がわからないのを情熱で補う。舌で結び目をこじ開け、その舌をすべり込ませる。しぶしぶという体で迎えに出てきたレオンのそれを搦め取り、貪る。  苦節百年、ついに片思いが両思いに……!  順平の頭の中にあるお花畑で、つぎつぎと蕾がほころぶ。かれこれ半世紀ぶりにフル勃起といく予兆にざわめく股間を、すべらかな下腹(したはら)にすりつけていくと、伸縮自在の牙が伸びて舌にぶすり。 「サカるのはあとだ、高飛びするぞ」  金臭い味が口の中いっぱいに広がり、順平は(はな)をすすった。おあずけとは殺生な、涙の海で溺れそうだ。  いじいじとの字を書いているところに、殊更めいた棒読みでこう言われた。 「おれは、時空を超えておまえと旅をする。仮に、仮にだ。人類が死に絶えたのちの遠い未来も一緒だ」 「俺たち精気にありつけないと干からびて最後は飢え死にしちゃうんで、人類の滅亡は死活問題……痛っ!」  ガチで殴られた。魔王が乗り移ったようなすさまじい形相で睨まれて、ムスコはおろかタマもしぼむ。 「せっかくの一世一代のデレが水の泡だろうが。だから、おまえはボケナスだと言うんだ」  ぷい、と階段を駆け下りる。順平は、そんなレオンに追いつき、追い越すと足下にひざまずき、両手を捧げ持った。 「永遠に一緒です。ついては契りを結ぶというか、愛のいとなみ的なことを俺の主導で行いたいなあ……と」    すみれ色の瞳が、悪戯っぽさと妖しさをない交ぜにきらめく。 「おれを抱こうなんて百年早い」  裏を返せば百年後には、むふ、むふ。  風に乗って歌声が運ばれてくる。ハレルヤが〝祝・カップル誕生〟に変換されて、鼓膜を震わせた。     ──めでたし、めでたし(?)──  

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