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第11話
「順平、一気にカタをつけるぞ。おれが、あいつに飛びかかってぶちのめす。おまえは……そうだな、歌って踊って応援してくれ」
「わからず屋! 俺を漢 にさせてください、なってみせます!」
と、叫び返すが早いか、レオンをその場に残して飛び降りた。
九十九田が迎え撃つ気満々に、階段口を背にして仁王立ちになった。そして胸をえぐったさいの威力を増すためだろう、杭を両手で構えると、ドリルのように回転させる。
順平は咄嗟に前かがみになった。ラグビー選手ばりのタックルをかけて九十九田を突き倒し、ついでにマントで簀 巻きにしてやる。むしゃぶるいがする、がんばれ、俺!
「自ら屠 られにくるとは、化け物ながら天晴れな根性だ」
杭が振りかぶられると、本能的に足がすくむ。順平は口を真一文字に結んだ。
ロケットスタートを切るときに爆発的なエネルギーを生むようにと、なおも姿勢を低くする。
事態は一騎討ちの様相を呈し、時代劇風の音楽が流れだしそうな雰囲気だ。
順平が半歩、踏み出した。九十九田が舌なめずりをした。
好機到来と、そこでレオンが動いた。塔屋の縁に這い寄ると、履き口を丸めて握ったブーツを振り上げて、力いっぱい振り下ろした。
狙いは何かって? 真下にいた九十九田の脳天めがけて、だ。
甲全体に鋲があしらわれた、ごつくて重いブーツをまともに食らっては、ひとたまりもない。きゅうと、ひと声残して九十九田がうずくまった。
「順平、ネクタイをほどけ!」
あたふたと指示に応じるはしからネクタイをかっさらい、それを用いて九十九田を後ろ手に縛ると、金髪をかきあげた。
「一件落着だ」
順平は拍手した。我に返って、イヤイヤ期の三歳児さながら床を踏み鳴らす。
「俺の大事な見せ場を奪 って、ずるい!」
「結果オーライ、阿吽の呼吸だったな」
と、澄まし顔で順平をいなしておいて胸倉を摑み、うつむくよう促す。
魅せられたように従った直後、こしらえたふうな渋面がアップで迫った。吐息に顎をくすぐられる。
反射的に目をつぶったせつな、やわらかいものが唇にちょんと触れて、すぐに離れた。
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