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第1話

 ソイツはいつも笑ってた。  小さい頃からずっと、辛い時でもヘラヘラ笑ってた。  唯一、俺の前で見せる笑顔以外の表情。  ――俺だけが知ってるお前の狂気。  まるで正反対だった。  成績優秀で誰からも頼りにされて、教師からの信頼もある俺と。  見た目から既に不良で、いつも悪い仲間とつるんでいるアイツ。  それがマンションのお隣さんで、しかも幼馴染み。  そして、俺のオモチャ。 「オレを一人にしないで」  不安で泣き崩れる幼馴染みを抱きしめる時、俺の中で冷たい感情が湧く。  もっと俺に依存すればいい。お前は俺がいなきゃ生きていけないんだから。 「じゃあ、俺の言う事聞いてくれるよね?」  いつからこんな風になったのか。  もう覚えていない。 「なんでもするよね?」 「する……なんでもするから」  コイツはもうとっくに壊れていた。 「オレを捨てないで」  違うか。  俺がコイツを壊したんだ――。  俺が狂わせた。俺が壊した。  そして依存させて、身体を繋げて、そんなものはただの行為で意味はないんだと教えた。  狂っていたのは俺の方。  壊れていたのは俺の方。  依存していたのは、俺の方。  相手がいないと生きていけないのは、俺の方。

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