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第14話
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「雅、時間だよ、起きて」
「んー……」
まだ眠そうな顔で何とか起きた雅はノソノソと洗面所へ向かう。
俺は朝食をテーブルに並べて雅が来るのを待った。
しばらくして雅が席に着く。
「いただきます」
「……いただきます」
今日もいつもと同じ朝が始まる。
あの日、お互いの依存を解放した俺達は、高校を出るまで普通の幼馴染みとして過ごした。
雅の暗闇恐怖症は治ってなくて、依存を解放したと言っても毎日の様にうちに泊まりに来ていた。
変わったのは、俺が途中でベッドから抜け出さなくなった事と、雅が夜遊びをやめた事。
そして身体だけを繋ぐ行為をしなくなった事。
高校を卒業してからは、二人して家を出た。二人で暮らす部屋を借りて、一緒に暮らし始めた。
雅は母親の愛人から学費や生活費をまとめて貰ったらしく、それを使って大学まで進学した。
元々、雅は頭がいいから勉強をきちんとすればサボっていた時の遅れなんてすぐに取り戻す事が出来た。
俺の方も雅と暮らすと両親に言ったら簡単に承諾してくれた。
俺が家を出た後、両親はそれを待っていたかの様にすぐに離婚した。
今は学費と生活費が二人からそれぞれ毎月振り込まれていて、それで暮らしている。
俺と雅は今、別々の大学へ通いながらも穏やかに暮らしている。
あれだけ依存していた関係は、今は信頼に変わっていた。
今でも時々、暗くて怖いと怯える雅を宥める為にぎゅっと抱きしめて眠る夜、俺はもっと強くなろうと誓う。朝になって雅が笑顔を見せるとその笑顔を全力で守ってやりたいと思う。
そして、ありったけの愛情を注ぎたいと。
「椎名」
「ん?」
雅はいつも俺の名前を呼んで抱きしめてくれる。そこには深い愛情が満ち溢れていた。
「大好きだよ、椎名」
「俺も大好きだよ、雅」
不器用でコドモだったあの日の俺達は「好き」という気持ちさえ知らなかった。
俺達はお互いを自由にする事で初めて気持ちを確かめあって、時間をかけて一つになれた。
だからもう、不器用だった俺達はどこにもいない。
依存して雁字搦めになっていた二人はもういない。
もう二度と間違えたりしない。
俺達はこうやって、いつまでもお互いを思いあって、優しく寄り添いながら生きていく。
了。
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