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第13話

 思う存分泣いた次の日の朝は、二人とも目が腫れて大変だった。  二人して目を冷たいタオルで冷やしながら、その姿に笑いあった。  こんな風に笑うのはいつぶりだろう。  全身の水分が全部なくなったみたいにカラカラだったけど、そのカラカラの場所を違う何かが満たしていく感覚がした。 「雅、もう俺の事は気にしなくていいから好きに生きなよ」  突き放したい訳じゃなく、本当にそう思った。俺に依存させていた心の呪縛を解いてやりたいと。 「椎名も、オレの事はもう気にしないで」  弱々しく笑う雅。その笑顔はもう作られたモノじゃない。  ――それは無理だよ、雅。  俺はきっとこの先も雅に何かあれば何を犠牲にしても駆けつける。俺の全ては雅だけなんだ。  でもこの感情は、依存ではない。  ただひたすら、雅が好きで愛しくて。  だからこの身を犠牲にしても守りたい。  沢山間違えて雅を傷付けたけど、今度は雅を守る存在になりたいんだ。 「そうだね……じゃあ、これからは別々だ」  だけど、雅は優しいから俺がそんな風に守りたいだなんて思ってるのを知ったら自由になれない。  だから俺は、俺達は別々の道を受け入れる。 「さよなら、雅」 「バイバイ、椎名」  最後に交わした口付けは、限りなく優しい光の中にいる気がした。

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