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第12話

 俺を抱く時、雅は俺の首に手をやる。  グッと手に力を入れて、締める。  息が出来なくて、苦しくて、段々意識が朦朧としていく。  ……ああ、死ぬのか。  そう過ぎった瞬間、手を離される。  一気に酸素が送られて咳き込む俺を、愛おしそうに見下ろす雅。  死ぬか、生きるかの狭間にいる俺を見て、楽しんでいる。  そんな雅を俺もまた愛しく思う。  これはきっと、おかしい事なのに。 「椎名、綺麗だね」 「綺麗……?」 「椎名が死にそうになる顔、凄く綺麗だ。綺麗過ぎてそのまま殺したくなる。椎名を殺したら、椎名はずっとオレのモノだね」  首についた雅の手の痕に触れた。そこから雅の熱で身体が侵食されていく。 「いいよ、雅」  とっくに覚悟は出来てるんだ。 「俺を殺してよ」  雅の為なら死ねる。  死んだ俺を見て、笑ってよ。  いつかみたいに、純粋に笑い合えたあの日の様に。  そして、俺のいない世界で俺を忘れて生きていって欲しい。  こんな狂った関係は終わりにしよう。  雅には心から笑っていてほしいんだ。  やっと気が付いた。  首を絞められ朦朧とする意識の中でわかったんだ。  俺は雅に笑っていてほしいんだ、何も知らなかった幼い二人だけの世界にいた時の様に。  雅がとても、好きだから。  大好きだから。 「……椎名はズルイよ……」  雅の目からポタポタと涙が溢れて俺に落ちた。それを見て俺も涙が出てきた。何の涙なのかわからないけど。  俺達はその日、まるで小さなコドモみたいに、泣きながら抱き合って眠った。  初めてこの世から出てきた赤子の様に、不安と期待を抱きながら小さく丸まって。

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