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第11話
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あの日から雅は俺にべったりだ。
学校でも家でも、塾だって終わるまで外で待っている。
一度、「待たなくていい」と拒否したら無言で凄まれた。
雅が、俺の言う事を聞かなくなった。
もう雅は俺のオモチャじゃなくなった。
「椎名。こっちおいで」
今まであまり学校では関わらない様にしていたのに最近は人目も気にしないで呼び止められる様になった。
「ごめん、今、先生に呼ばれてて……」
「おいで」
いつの間にか立場は逆転していた。
俺は雅が怖くて、黙って雅の言う事を聞いていた。
雅がボコボコにしたという生徒はあの日以来学校で見かけない。退学したと聞いた。
それ以上の噂は流れて来ない。
後から雅から聞いた。雅の父親はかなりの権力者らしく、このくらいの暴力沙汰はいくらでももみ消せるんだと。
「椎名は可愛いね」
ちっとも笑っていない目で俺に触れる。
「可愛い椎名。離れたらダメだよ」
見えない鎖で縛られて動けない。
「オレを裏切ったら」
だけど、何故か俺は安心している。
これで雅は何処にも行かない。
俺の傍にだけ、ずっといる。
「殺すからね?」
――俺は雅に殺されたい。
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